研究課題/領域番号 |
16K02535
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
吉田 典子 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (20201006)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | エミール・ゾラ / シャルル・ボードレール / エドゥアール・マネ / ポール・セザンヌ / 美術批評 |
研究実績の概要 |
本年度の実績は、大きく分けて以下の4点にまとめることができる。 (1)ボードレールとマネの関係について、詩人が画家に捧げた散文詩「紐」についての分析と、そこから読み取ることのできる両者の芸術の相互関係について考察し、2016年5月21日に東京大学において開催された国際シンポジウムにおいて口頭発表をおこなった。さらに、このシンポジウムに基づいて刊行予定の書籍に「ボードレールとマネ―散文詩「紐」を中心に」と題した研究論文を執筆した(未刊行)。 (2)ゾラとセザンヌの問題について、2016年9月24日にフランスのエクサン=プロヴァンスにある元セザンヌ家の別荘ジャズ・ド・ブッファンで開催されたシンポジウム「ゾラと私...」に参加し、近年の新書簡発見以降のセザンヌとゾラの関係の見直しに関して、様々な情報を得た。また、このシンポジウムと軌を一にして、セザンヌとゾラの『往復書簡集』がガリマール書店からはじめて出版されたが、編者のアンリ・ミトラン氏から直接話を伺うことができた。また、この書簡集の邦訳を共訳で出版する話がまとまり、共訳者とも共同してセザンヌとゾラの書簡に関する調査研究を進めている。 (3)ゾラの美術批評について、2016年12月17日、日仏美術学会国際シンポジウム「ゾラの美術批評を再考する」を開催し、座長をつとめた。セザンヌをはじめとする近現代美術史研究で高名なテキサス大学教授リチャード・シフ氏を基調講演者として迎え、美術と文学の両分野からゾラの美術批評を照射する試みをおこなった。研究発表ではゾラの美術批評におけるボードレールの影響について口頭発表をおこなったが、現在、このテーマについての研究論文を執筆中である(2017年7月、掲載予定)。 (4)昨年より取り組んでいるゾラの『1866年のサロン』の注釈付き翻訳の後半を紀要に掲載した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この課題の具体的な研究目的として、(1)ボードレールとマネの関係の再考、(2)ボードレールからゾラへの批評言説の継承と発展、(3)ゾラの初期作品における絵画からの影響、(4)ゾラとセザンヌの関係の再考、の4点を挙げていたが、このうち(1)と(3)については、国際シンポジウムで口頭発表をおこない、それを元にして研究論文を執筆するという流れで、予定通り研究を進めていくことができた。また(4)についても、本研究費によってフランスに出張して、ゾラとセザンヌに関するシンポジウムに出席したり、関連資料を調査したり、海外の研究者から直接話を聞いたりすることができたので、研究の基礎的な部分についてはかなりの進展が見られる。したがって、全体として本研究はおおむね順調に進展していると判断される。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、ボードレールとマネの関係再考について、2017年5月にはボードレール没後150年を記念して、東京大学(本郷)においてシンポジウムが開催されるので、その機会を利用してふたたびマネの《テュイルリーの音楽会》を中心として詩人と画家の関係を再考する試みに取り組む。このようにして、ボードレールの作品から見たマネ、およびマネの作品から見たボードレールという双方向的なアプローチで、両者の恊働関係についての考察をまとめていく予定である。 また、ゾラの美術批評についての研究、およびゾラとセザンヌとの関係についての研究には、翻訳作業と合わせて継続して取り組んでいく。とりわけ、ゾラの初期における美術批評家としての活動に注目し、美術批評と初期の小説作品の関係についての研究を進める。夏期休暇を利用してフランスに出張し、フランス国立図書館、ゾラ研究センター、オルセー美術館等で資料調査を進める予定である。 以上の研究の成果については、随時、研究会や学会等で発表し、論文の形で執筆を進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度に購入予定だった書籍が期限までに入荷しなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
購入予定だった書籍を購入する。
|