研究課題
最終年度にあたる本年度は、研究計画にしたがって、新約聖書以降の初期キリスト教文献における偽名文書を研究対象として取り扱った。紀元後2世紀から3世紀にかけて著された初期キリスト教文献には、ペトロやパウロといった最初期の代表的人物の名前を借りた偽名文書が見られるが、そのほとんどは、偽書であることがはっきりしており、真筆性をめぐって意見が分裂するということはほとんどない。この点が、偽名性を覆い隠す意図が見て取れる新約偽名文書との大きな違いになっている。これら、偽名性が明瞭な文書が多く作られた背景をまとめて、論文にすることが研究期間中にはできなかったので、これは数年以内に実現する予定である。この成果については、あまり一般に知られていない文書が多いことから、学術的媒体での発表も重要だが、一般向けの媒体を用いることも考えたい。他方、2世紀前半に書かれたとされる、アンティオキアの司教イグナティオスに帰される書簡集については、これを偽書とする見解が近年出され、再び議論の対象となっている。この点について、研究期間内には結論をまとめることができなかったので、継続課題としたい。本年度中には、新約聖書の第一ペトロ書簡(ペトロの名を借りた偽名文書)に関する国際学会発表が1本、そして海外で出版された単行本(論文集)に論文が1本公表された。第二ペトロ書簡およびユダ書簡についての分析結果を、令和2年度内に学会で口頭発表する準備を進めていたが、コロナウィルスのため諸学会が軒並み開催中止に追い込まれており、計画を若干修正する必要が生じている。場合によっては、学会での口頭発表を断念し、学術論文の形で公表することも考えている。
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