研究課題/領域番号 |
16K02539
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
梁川 英俊 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (20210289)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | インディアナ大学 / アンリ・ゲドス / フォークロア / 中世文学 / ケルト学 / ルヴュ・セルティック |
研究実績の概要 |
今年度の最初の研究課題は、18~19世紀におけるフランスにおける中半世文学の復興に関して、文献等の調査によりその全体像を把握することであった。幸いその目的は年度の前半に予想以上に早くある程度達成することができたので、続けて次年度以降の課題であったヨーロッパ最初のケルト学の専門雑誌『ルヴュ・セルティック』について、この雑誌の最初の22巻を購入して内容を調査する一方で、同雑誌の創刊者で初代編集長であったアンリ・ゲドスに関する調査にも着手した。 アンリ・ゲドスはフランスで初めてケルト学を学問として基礎づけようとした人だが、これまで本格的な研究の対象となったことはなく、その学問的・思想的背景に関しても未知の部分が多い。したがって、手始めに彼のフォークロア関係の蔵書を「アンリ・ゲドス・フォークロア・コレクション」としてすべて所蔵している、米国インディアナ大学ブルーミントン校に約2週間滞在して同コレクションの調査を行った。 コレクションはすべてマイクロフィシュ化されており、全部で6749タイトルという膨大なものであるが、そのうち1000タイトル程度をスキャンして、すべてPDF形式で保存することができた。2週間程度でコレクションの全体像を把握することはもとより不可能だが、その輪郭はある程度つかむことができたのではないかと考えている。同コレクションにはフォークロア関係で貴重な文献が多々あり、興味深いテーマを幾つか宿題として持ち帰ることができた。今後の研究につなげたい。 調査の成果は、2016年10月に行われた日本ケルト学会研究大会のシンポジウム「フォーラム・オン」において、「アンリ・ゲドスと『ルヴュ・セルティック』」と題して発表し、その内容を同じタイトルの論考にまとめて、同学会の機関誌『ケルティック・フォーラム』に掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の課題であったフランスにおける中世文学の復興とケルト学の関係については、予想以上に早くその概要をつかむことができた。『ルヴュ・セルティック』に関しては、現在その全体像を把握すべく調査中であるが、全51巻と膨大な量になるので、しばらく時間が必要である。「アンリ・ゲドス・フォークロア・コレクション」の調査結果の分析はまだこれからであるが、全体として見れば研究を阻害する要因も見当たらず、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究で得られた成果は、日本ケルト学会の機関誌『フォーラム・オン』の次号に、ウェールズやアイルランドを専門とする研究者と一緒に共著論文として発表する予定である。またフランスの中世復興とケルト学の関係については、いっそう研究を深めて将来的に著書として刊行したい。なお今年度の研究において、当初の研究計画にはなかった「人種理論」の問題が新たに浮上した。この問題はその「デリケートさ」ゆえに、欧米の研究において正面から検討されてこなかった事柄だが、「ケルト」概念の変遷を考えるうえで避けて通れない重要な問題である。「人種理論とケルト」に関しては、来年度より日本ケルト学会のメンバー数人と共同研究を進める予定であるが、その成果は本研究のテーマである「フランスにおけるケルト学の成立」にも大きく関わってくる可能性がある。
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