研究課題/領域番号 |
16K02542
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
村田 京子 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (60229987)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | エミール・ゾラ / ジョルジュ・サンド / 印象派 / 彫像 / 衣装 / 絵画 / ジェンダー |
研究実績の概要 |
本研究の目的(「19世紀フランス文学と造形芸術を小説構造や小説美学、作家の芸術論と密接に関連させて考察・分析する」)に基づき、H28年度はまず、エミール・ゾラの『獲物の分け前』を研究対象として取り上げた。女主人公ルネの衣装が彼女のアイデンティティと密接に結びつくこの小説を「服飾小説」とみなし、衣装と人物の関係をジェンダーの視点から分析すると同時に、衣装や人物像の描写と深く関わる、印象派の絵画やアカデミー絵画との相関関係を探った。さらに、ゾラの芸術論を彼の美術評を通して検証した。その研究成果は女性学講演会で発表し、発表原稿を講演会集(2017年3月刊行)に掲載した。 次に、研究計画に記載したように、女性作家の作品として、ジョルジュ・サンドの『ジャンヌ』を取り上げ、「古代の彫像」「ガラテイア」「カノーヴァのマグダラのマリア像」など「彫像」にしばしば喩えられる女主人公が、なぜ「美術品」と同列に並べられているのか、ジェンダーの視点からその理由を探ると同時に、「彫像」の象徴的な意味を分析した。その研究成果を紀要論文(2017年3月刊行)に掲載した。なお、H29年6月にフランスで開催予定のジョルジュ・サンド国際学会に、このテーマで応募したところ、学会組織委員会の審議を経て、研究発表が決まった。そのため、上記の日本語論文を圧縮した形でフランス語論文にする予定である。 H29年3月にはフランスに赴いて、オルセー美術館、ルーヴル美術館、ロダン美術館などを訪れて19世紀フランス文学と関わりの深い絵画、彫像を直に確かめ、カタログや美術書など必要な書籍を手に入れた。フランス滞在中にバルザックおよびサンド研究の第一人者、Nicole Mozetパリ第7大学名誉教授、Gerard Gengembreカーン大学名誉教授と会うなど、フランスの研究者との交流を深め、意見交換を図った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画ではゾラの『制作』を取り上げる予定であったが、それを変更してゾラの『獲物の分け前』を取り上げた。それは、前年度に研究対象として取り上げたゾラの『ナナ』の女主人公と『獲物の分け前』の女主人公との関わりを探り、共通点、相違点を検証することでゾラ作品の造形芸術との関わりをより鮮明にすることができると考えたためである。さらにゾラの作品分析の他に、次年度以降に予定していたジョルジュ・サンドの作品『ジャンヌ』を取り上げて作品分析し、論文にすることができたので「当初の計画以上に進展している」とした。
|
今後の研究の推進方策 |
H29年度は、上記で触れたように、サンドの国際学会で『ジャンヌ』における「彫像」の象徴的意味について研究発表を行う。また、9月にバルザックと食に関する国際シンポジウムを主催する予定で、そこでは『人間喜劇』における「娼婦の食卓」について絵画を援用しながら検証していく。また「女らしさ」と対になる「男らしさ (virilite)」について、アラン・コルバンの「男らしさ」の概念を参照しながら、19世紀フランスの文学作品をジェンダーの視点から考察する。 H30年度以降は、芸術家小説として、ゾラの『制作』やゴンクール『マネット・サロモン』を取り上げ、男性画家と女性モデルの関係をジェンダーの視点から探ると同時に、それぞれの作家の美術評や芸術論、作品と深く関わる絵画を分析することで、文学と造形芸術の相互浸透を検証する。また、「娼婦」を描いた作品(ゴンクール『娼婦エリザ』、ユイスマンス『マルト、ある娼婦の物語』など)を取り上げ、自然主義作家の娼婦像の特色を明らかにすると同時に、それぞれの小説と挿絵、小説と密接に関わる絵画との関係を分析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
H29年度にサンドの国際学会に参加する予定で、その旅費を29年度分の助成金と合わせて使いたいため。
|
次年度使用額の使用計画 |
H29年6月15日~6月25日までサンドの国際学会に参加する旅費として使う。
|