研究最終年度に当たる2018年度には、(1)日本独文学会春季研究発表会(於早稲田大学)におけるシンポジウム「断絶のコミュニケーション」のパネリストとして「ドイツ再統一後における反ナチズム言説と全体主義理論」の表題にて発表を行った。これをもとに充実させた論文「ドイツ再統一と政治的言説の変容」が、論文集『断絶のコミュニケーション』(ひつじ書房)に掲載され刊行された。(2)ドイツ文学研究誌『詩・言語』に「ヘッセのアメリカ/アメリカのヘッセ」という表題にて、アメリカにおける近代ドイツ文学の受容の問題を扱った。(3)2017年に行われた国際シンポジウム「住むこと/途上にあることwohnen/Unterwegssein」(於学習院大学)における発表「橋の上に住むことーハイデガー「建・住」再考 Auf der Bruecke wohnen (副題略)」が、ドイツで刊行された論文集"Wohnen und Unterwegssein"(Transcript社)に掲載された。(4)日本独文学会文化ゼミナール(於蓼科リゾートホテル、2019年3月)にて、講演「死者の語りDie Sprache der Toten」(ドイツ語)を行った。また、ハインリッヒ・フォン・クライスト研究が論文集としての刊行準備が進んでいる。 これらの業績は、いずれも「抗争性」という観点からコミュニケーション(業績(1))、文化の受容と変容(業績(2))、越境(業績(3))、秩序とその組み替え(業績(4))といった問題を再検討したものであり、それぞれの主題に関して仲介的第三者を前提としない双務的関係からの秩序の自発的発生の可能性を探った。
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