研究課題/領域番号 |
16K02560
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
大崎 さやの 東京藝術大学, 音楽学部, 講師 (80646513)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 台本作家 / 創作理念 / 詩と歴史 / オペラと歴史 / 女性像の変遷 |
研究実績の概要 |
今年度は、国内での資料収集を中心に研究を進め、雑誌論文1本と、2回の学会発表、および講演会を1回行った。 「啓蒙とフィクション」研究会における発表「ゴルドーニのオペラ『スタティーラ』をめぐって」では、1641年にゴルドーニが発表した『スタティーラ』台本を扱うにあたり、それに先立つスタティーラをヒロインとする複数のイタリアのオペラ作品を、ブゼネッロ台本・カヴァッリ作曲の1656年の作品を嚆矢として歴史順に概観し、それぞれの台本の持つ特徴を浮かび上がらせた。その後それらの作品を、ゴルドーニ作品と比較して、ゴルドーニのオペラのヒロイン像の新しさについて論じた。「〈モンテヴェルディ生誕450年記念シンポジウム〉モンテヴェルディのオペラから広がるバロック・オペラの世界」では、「《ポッペーアの戴冠》の台本作家ブゼネッロについて ー歴史上の人物を扱った最初のオペラ作家ー」とのタイトルで発表を行い、歴史上の人物を扱った最初のオペラ台本を書いたブゼネッロの創作理念や、《ポッペーアの戴冠》に見られる彼の思想を分析し、過去の研究者達の解釈を考察しつつ、この作品の解釈を再考した。この発表をもとに、「〈モンテヴェルディ生誕450年記念シンポジウム〉モンテヴェルディのオペラから広がるバロック・オペラの世界 報告書」に「《ポッペーアの戴冠》の台本作家ブゼネッロについて ー歴史上の人物を扱った最初のオペラ作家ー」を発表した。「知求アカデミーオープンカレッジ」における発表「イタリアの演劇人とフランス~演劇とオペラにおける文化交流」では、16世紀から18世紀にかけての、イタリアの演劇人のフランスにおける活動について、主にコンメディア・デッラルテとオペラに焦点を絞って論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、学会発表「ゴルドーニのオペラ『スタティーラ』をめぐって」において、ゴルドーニの台本に先立つ台本として、前年度に研究を進められなかったゼーノの執筆した台本『スタティーラ』(パリアーティとの共同台本)を取り上げることで、ゼーノの台本やその女性像の特質を考察することができた。同時に、ブゼネッロの『スタティーラ』(1656年発表)も取り上げたことで、初期オペラの研究も着手することができた。ブゼネッロについては学会発表「《ポッペーアの戴冠》の台本作家ブゼネッロについて ー歴史上の人物を扱った最初のオペラ作家ー」でも、その文学的思想や創作理念について分析を行ったが、17世紀の初期オペラの台本や台本作家に関する知識は、18世紀のオペラ台本の特質を捉える上で有益と思われ、本研究の今後の進展に役立つものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
学会発表「「《ポッペーアの戴冠》の台本作家ブゼネッロについて ー歴史上の人物を扱った最初のオペラ作家ー」」を基にした論文を学術誌にて発表予定である。また、学会発表「ゴルドーニのオペラ『スタティーラ』をめぐって」についても、論文にまとめて学術誌に投稿したいと考えている。18世紀オペラ台本に見られる女性像を論じるにあたっては、18世紀の台本は勿論のこと、17世紀の台本からの変遷も視野に入れる必要性を、今年度の研究を通して改めて感じた。故に、研究計画通り18世紀のオペラ台本の研究を進めると同時に、今後は初期オペラの研究も継続していきたいと考えている。また、アリストテレス『詩学』やホラティウス『詩論』がオペラ台本作家たちの創作理念に与えた影響についても、分析を進める予定である。なお、初年度に行った学会発表「ゴルドーニとオペラ・セーリア -メタスタージオ作品との関係を中心に」についても、その内容をまとめたものを学会誌に投稿したいと思っている。
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