研究課題/領域番号 |
16K02560
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
大崎 さやの 東京藝術大学, 音楽学部, 講師 (80646513)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ゴルドーニ / 演劇 / オペラ台本 / イタリア / 古典 / 伝統 / 革新 / 女性登場人物 |
研究実績の概要 |
今年度は、国際学会での発表を含む研究発表を3回行い、共著を2冊を刊行した。 一昨年度、昨年度と、ヴェネツィアにおける演劇とオペラの伝統と革新についての論文を発表してきたが、今年度はその延長線上の研究として、International Congress on the Enlightenmentにて、「Rethinking Goldoni's tragicomedy La sposa persiana through comparison with past Venetian theater works」 の題で口頭発表を行った。ゴルドーニの悲喜劇『ペルシャの花嫁』を、過去にヴェネツィアで上演されたオペラ作品と比較することで、当作品がヴェネツィア演劇の系譜の中で持つ意味を探った。二期会イタリア歌曲研究会での発表「イピゲネイアを主題とする劇の変容 -18世紀のイタリアとフランスのオペラ台本を中心にー」では、エウリピデス以降受け継がれてきたイピゲネイア主題の悲劇およびオペラ台本について論じた。早稲田大学オペラ/音楽劇研究所バロックWG研究会においても18世紀のイピゲネイア主題の作品について発表し、その発表時に意見交換を行ったメンバーを中心にシンポジウム「ギリシア悲劇主題の18世紀のオペラ ―イピゲネイア主題のオペラを起点として」の開催を企画したが、新型コロナウイルスの蔓延のため、次年度に延期した。 『西洋演劇論アンソロジー』では、過去の論文で論じたカステルヴェトロ、リッコボーニ、ゴルドーニの演劇論を中心に、マリネッティ、ピランデッロ等イタリア演劇論の抄訳と解説を担当、イタリア演劇における古典の伝統と新たな時代の革新について認識を深めた。ピランデッロの演劇論についての知見を得て、『ベスト・プレイズⅡ』では彼の代表的戯曲『作者を探す六人の登場人物』の翻訳と解説を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『西洋演劇論アンソロジー』におけるカステルヴェトロやゴルドーニによる演劇理論の翻訳と解説を通して、ヴェネツィアの演劇作品やオペラ台本の創作理論に関する理解が深まった。国際学会での発表「Rethinking Goldoni's tragicomedy La sposa persiana through comparison with past Venetian theater works」に際しても、こうした創作理論の理解が大いに役に立った。また、この学会発表を通じて、新たにイタリアの演劇やオペラ台本における韻文使用の伝統にも目を開かれた。その成果は、2020年度に論文「マルテッリアーノ詩形と演劇の音楽性」として刊行予定である。また、イピゲネイア主題のオペラ台本をめぐる研究は、二度の発表の機会を得た後、イタリア、フランスのみならず、ドイツ、ロシア、イギリスを専門とするメンバーと共に、新たに多言語横断的なシンポジウムを企画するに至った。残念ながらシンポジウムは次年度に延期となったが、メンバーとの意見交換を通じて、さまざまな言語圏におけるイピゲネイアをめぐるオペラ台本に関する知見が広がった。
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今後の研究の推進方策 |
まず、なによりも論文「マルテッリアーノ詩形と演劇の音楽性」を2020年度内に刊行する。同時に、延期となったシンポジウム「ギリシア悲劇主題の18世紀のオペラ ―イピゲネイア主題のオペラを起点として」を開催し、できればシンポジウムの内容をまとめて、論集としての刊行することを目指したい。また、2017年度に発表した「ゴルドーニのオペラ『スタティーラ』をめぐって」の年度内の論文化にも取り組みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの蔓延により、2020年3月に東京藝術大学にて企画していたシンポジウム「ギリシア悲劇主題の18世紀のオペラ ―イピゲネイア主題のオペラを起点として」を次年度に延期せざるを得なくなったため。
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