研究課題/領域番号 |
16K02576
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
岡本 和子 明治大学, 文学部, 専任准教授 (50407649)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ベルリン / グツコー / ベンヤミン / ドイツの人びと |
研究実績の概要 |
今年度は、ベルリンで幼年時代を過ごした作家の作品の分析と、ベルリンという都市が、ベンヤミンが編纂した書簡集のなかで占める地理的な意味についての考察を行なった。 ベルリンで幼年時代を過ごした作家として、最初期に都市を描いたのはグツコーである。グツコーは当時すでによく売れている作家であったが、ベルリンを舞台とする幼年時代の回想録は、当時あまり評価されなかった。回想録であるにもかかわらず、人物描写よりも都市の描写の方が前面に出ていると見なされたのである。つまり、ベルリンそのものが文学の対象とは見なされていなかったのである。レルシュタープもみずからのベルリンの幼年時代を描いている作家であるが、彼の回想録も、他の彼の作品に比して、あまり重要視されてこなかった。グツコーについては、幼年時代の記述という観点からであるが、論文「ドイツ近代文学における幼年時代の記述―大都市ベルリンの場合」(明治大学人文科学研究所紀要第80冊、2017年)に、その分析を発表した。グツコーとレルシュタープによるベルリン記述の当時の受容については、今後論文として発表する予定である。 また、ベルリンという都市が、ベンヤミンが編纂した書簡集『ドイツの人びと』という書簡集のなかで、近代ドイツの精神史においてどのような地理的な意味をもたされているかを考察し、論文にまとめた。この書簡集にはちょうどベルリンがドイツ帝国への首都へとのしあがる18世紀後半から19世紀後半までの書簡が収められているが、この書簡集のなかでのベルリンは、ドイツを空白として呈示するための死の場所として登場している。本論文は2017年度中に発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果の一部はすでに論文として完成させ、現在投稿中である。 資料の収集も順調に進んでおり、研究環境は整っている。 また、研究を進めるなかで、書簡という形式がもつ近代的な意味について考察する機会を得た。書簡を郵便制度という近代的な制度が関わった、近代に特有の形式と捉えた場合に、都市と文学というテーマのなかで書簡という形式がどのような意味をもちうるか、という問題が新しく浮上したが、このテーマは今後本研究においても追究する必要があると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
ベルリン文学の作品分析を引き続き継続して行う。今後は文学的・詩的な作品のほかに、地誌的・都市案内的な記述についての分析も進める。その際には、それぞれの時代の地図的な資料も考察対象としてゆく。 まだ資料収集が万全ではない作家(レルシュタープ等)についての資料収集も引き続き継続して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年3月に資料収集のため海外出張を行なったが、事務処理の都合上、2017年4月以降の清算となり、次年度使用額として記載されている。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年3月に行った海外出張の旅費として充当予定である。
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