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2017 年度 実施状況報告書

近代ドイツ文学における都市ベルリンの記述可能性

研究課題

研究課題/領域番号 16K02576
研究機関明治大学

研究代表者

岡本 和子  明治大学, 文学部, 専任准教授 (50407649)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワードベルリン / ベンヤミン / ドイツの人びと / フォンターネ / 文学 / ドイツ
研究実績の概要

今年度は、ベルリン生まれの批評家ベンヤミンが編纂した書簡集『ドイツの人びと』の分析を論文"Briefsammlung als Zeugnis vom Leben des deutschen Burgertums" (Neue Beitrage zur Germanistik 155)として発表した。本論文では、この書簡集がドイツ市民階級の歴史を、とくにその政治的無力さという観点から描き出そうとするものであることを明らかにしたものである。本書簡集に収められた18世紀後半から19世紀後半までは、ベルリンという都市が、北ドイツのやせた土地に囲まれた貧しい一都市から、ドイツ帝国の首都へと飛躍する時代であるが、この書簡集では、ベルリンはドイツ市民階級の無力さの象徴として現出するように構成されている。
さらに、ベルリン近郊に生まれ育った作家フォンターネの長篇小説『エフィ・ブリースト』(1895)の分析を行っている。本作品では婚姻関係が大きな主題のひとつであるが、フォンターネはこの婚姻関係をとりまく家屋や館を写実的に詳細に描き、それによって当時のベルリン近郊の生活を描き出している。この描写を、同じく婚姻関係を大きな主題とするオーストリアの作家シュティフターの長篇小説『晩夏』における描写と比較すると、シュティフターの描写が家屋敷を解体しつつも構築し、定住することへと向かっているのに対して、フォンターネによる家屋敷の描写には、外国や旅を思わせるものが多数登場することがわかる。ベルリンという都市が土着性よりも外向きの志向性を強く持つことを明らかにした。本研究は2018年度中に論文として刊行予定である。
なお、春期にはベルリン国立図書館において、不足していたレルシュタープ等のベルリン作家の資料を収集した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究成果が査読を経て学会誌に掲載されることとなった。また、昨年度収集しきれなかったレルシュタープの散逸している著作をベルリンの国立図書館で収集することができ、本格的にレルシュタープ研究ができる状況が整った。
また、ベルリン文学とオーストリア文学を比較することによって、文学に描かれたベルリンという都市の特性より鮮明に描き出すことが可能だということがわかり、方法論的にも幅が広がった。

今後の研究の推進方策

ベルリン文学の作品分析を引き続き行う。今後は、ジャーナリスティックな内容の著作をさらに考察対象として加える予定である。そうした著作のなかには、著者の全集や単行本に収録されていない短い新聞記事等の資料も少なくない。なかには、ベルリンの国立図書館にも所蔵されていないもの、あるいは、号数等が不明なものもあるため、現地での調査が引き続き必要になると思われる。

次年度使用額が生じた理由

年度末に資料収集のためのドイツ出張をしなければならなかったため、予備費が残ってしまった。次年度には書籍資料の購入に使用する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Briefsammlung als Zeugnis des deutschen Burgertums. Versuch einer Annahrung an Benjamins Deutsche Menschen2017

    • 著者名/発表者名
      Kazuko Okamoto
    • 雑誌名

      Neue Beitrage zur Germanistik

      巻: 155 ページ: 74-94

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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