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2018 年度 実施状況報告書

近代ドイツ文学における都市ベルリンの記述可能性

研究課題

研究課題/領域番号 16K02576
研究機関明治大学

研究代表者

岡本 和子  明治大学, 文学部, 専任教授 (50407649)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワードドイツ文学 / ベルリン / 都市 / フォンターネ / パウル・グルク
研究実績の概要

2017年度に引き続き、フォンターネの長編小説における都市ベルリンの描写の分析を行った(『迷いともつれ』)。この作品の主題は「身分違いの恋愛」であるが、この作品ではは、人間関係の描写のなかに、ベルリンを舞台として起きていた社会構造の転換もが描かれているということを明らかにした。すでに行っている『エフィ・ブリースト』の分析と合わせて、論文として刊行する予定である。
また、これまでに研究を進めていたベルリン勃興期(19世紀前半)の、ベルリンを描いた初期の作品についての論文を執筆した。19世紀前半には、長編小説においてベルリンが描かれることはまだなく、短編において都市が現われるにすぎない。ティークとホフマンの短編作品を比較しつつ、18世紀末から1820年代までのあいだに、当初は文学の背景にすぎなかったベルリンが文学の主題となってゆくさまを明らかにした。
さらに、今年度は新たに、パウル・グルクの作品分析を開始した。グルクは、20世紀前半に活躍した作家であるが、フォンターネがユンカーや上流階級の人びとを主人公としていたのに対して、グルクの作品は庶民を主人公としている。とりわけ『ベルリン』(1934年)という長編小説は、筋のドラマチックな展開にはほとんど重きが置かれておらず、ベルリンにおける都市生活の微細な部分を描いているという意味で、都市そのものを主題とする作品である。後世に高く評価されているデーブリーンの『ベルリン・アレクサンダー広場』(1929年)と比べると、具体的な地名がほとんど登場しないということが注目に値するが、このことは、ベルリンという都市がもっていたファンタスマゴリー的な性格を表しており、都市を描く文学作品としてもっと高く評価されてよい作品である。
夏季にはベルリン国立図書館および芸術アカデミーにて、20世紀ベルリン文学関連の資料を収集した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

まだ未刊行の論文があるが、研究そのものは着実に進展している。2019年度中に、19世紀後半から20世紀前半にかけての長編小説についての研究成果と、ベルリン勃興期の初期のベルリン文学(短編)についての研究成果を発表する予定である。

今後の研究の推進方策

ベルリン文学の作品分析を引き続き行い、19世紀後半から20世紀前半にかけてのベルリン長編小説論を執筆し、研究成果を論文として刊行する。また、新聞掲載記事として発表された文章について研究を進めるため、引き続き資料収集も行う。

次年度使用額が生じた理由

ドイツでの資料収集の際に、書籍媒体で購入を予定していた研究書を電子媒体で入手することができたため、書籍購入を予定していた費用に余裕ができた。次年度の書籍資料の購入に使用する予定である。

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公開日: 2019-12-27  

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