研究課題
まず、高田英樹『中世ヨーロッパ東方記』(名古屋大学出版会 2019年)に、グユク・カンがインノケンティウス4世に宛てた国書(ペルシア語版)の日本語訳を提供した。書籍全体の趣旨・体裁統一のため、詳細な注釈を付すことはできなかったが、プラーノ・カルピニのジョヴァンニが伝えるモンゴル語原文からラテン語への翻訳方法を意識して、『元朝秘史』『華夷訳語』、現存する国書の数々を参考に、もとのモンゴル語(散逸)を推測しながら、敢えて『元典章』等に使用されている直訳体漢文を以て翻訳した。“研究成果の社会還元”の一環で、歴史の専門知識が時に文学の解釈や近現代社会の理解にいかに役立つかの具体例として、二回にわたり、アガサ・クリスティの短編に登場する“鷲の巣”――イスマーイール派の山城を取り上げ、モンゴル時代の東西の文献・図像、同時代からハンマー・プリュグシュタル、女探検家のフレイヤ・スタークや日本の本田實信等にいたるまでの研究史を整理・詳細に紹介し、かつ文章化した。なお、本研究の成果で、前年度に公刊した『モンゴル時代の「知」の東西(上)(下)』(名古屋大学出版会 2018年)が、第7回パジュ・ブック・アワード(著作賞)を受賞した。中華人民共和国・中華民国・香港・韓国・日本・沖縄の6地域の出版物からの選出で、“ユーラシアの東西で時を同じくして読まれた書籍”を研究課題にしている代表者には光栄なことであった。現在、この学術書の内容をより平易に解説しつつ、かつ最終年度の研究成果、資料分析も踏まえた一般書を準備中である。
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高田英樹編訳『原典 中世ヨーロッパ東方記』名古屋大学出版会ISBN:9784815809362,
巻: - ページ: 100-102
図書, 岩波書店
巻: 844 ページ: 6-11