研究課題/領域番号 |
16K02585
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平田 昌司 京都大学, 文学研究科, 教授 (50150321)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 文学革命 / 章炳麟 / 翻訳 / 明治期の学術 |
研究実績の概要 |
前年度には、中国の文学革命が1910年代のアメリカに留学した中国人学生たちの動向と如何に深く関わるかを重点としていた。今年度は、19世紀末~20世紀初の日本との関わりについて取り組んだ。特に重点を置いたのは、章炳麟(1869-1936)およびその弟子の魯迅(1881-1936)・周作人(1885-1967)兄弟らが20世紀前半の言語・文学観に及ぼした影響である。 章炳麟が日本亡命中に明治期の学術から多大な影響を受け、かつその成果を中国に伝えていたことは、つとに小林武氏を初めとする研究者によって詳しく指摘されてきた。本研究においては、(1)岸本能武太『社会学』の漢訳本全体を章炳麟訳とみなすのは適切でないこと;(2)章炳麟による「文学」の定義が中国固有の文学観に由来するという過去の見方は妥当でなく、実は同時代の最新の英文学史・文学概論等の影響を受けたこと;(3)明治期の日本で大流行した専門学校の「講義録」が、章炳麟の国学講習会や言文一致観に影響を与えたことを「章炳麟“文”説溯源」として、北京大学中文系主催の「現代文学与書写語言」学術会議で発表した。 また、2017年8月1日に京都大学文学研究科において文学革命百周年記念ワークショップを開催し、台湾から招聘した楊貞徳氏(中央研究院)の講演のほか、学内の研究協力者3名(祝世潔氏、趙偵宇氏、黄詩琦氏)の研究発表により、文学革命とその前後の中国文学の状況につき、議論を深めた。 そのほか、魯迅『古小説鈎沈』と章炳麟の知的影響に関する調査;前年度から作業を行っていた任鴻雋書簡訳注の一部の補訂作業を行い、最終年度の成果報告に向けた準備作業をすすめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2017年度は、研究科長としての任期の最終年度であったが、予期しない事態が複数件発生し、その対応のため多くの力を割かざるを得なかった。 2017年8月1日に京都大学で開催した文学革命百周年記念ワークショップの開催にあたっては、前年度に続いて陸胤氏(北京大学)・袁一丹氏(首都師範大学)を招聘し、研究の継続性を維持する予定であったが、御事情によって次年度に延期することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に招聘が実現しなかった研究者をあらためて海外から招聘し、研究の推進をはかる予定である。 また、研究計画を立てた際に注意していなかったThe Chinese Students’Monthly Onlineを前年度に購入し、在米の中国人留学生が1906~1931年にどのような言説を英語で発表していたかを把握することができるようになったため、研究の推進がより容易になった。
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次年度使用額が生じた理由 |
(1)部局長としての業務が忙しく、謝金を支払ってアルバイトによる作業をすすめるための監督の余裕がなかった。 (2)文学革命百周年記念ワークショップの規模を縮小したため、航空券キャンセル料が生じたものの、旅費支出が当初予定していた金額にならなかった。
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