研究課題/領域番号 |
16K02587
|
研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
楊 莉 奈良女子大学, 大和・紀伊半島学研究所, 協力研究員 (60760486)
|
研究分担者 |
桑原 祐子 奈良学園大学, 情報学部, 教授 (90423243)
中川 ゆかり 羽衣国際大学, 人間生活学部, 教授 (30168877)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 敦煌書儀 / 吉凶書儀 / 内族 / 外族 / 語釈 / 意訳 |
研究実績の概要 |
敦煌文献資料の一種である敦煌書儀について、各々の書儀に注釈を加え、実用生活における書記言語資料としての位置づけを行うことが本研究の目的である。 そのためには、敦煌書儀の注釈の作成が不可欠である。すでに、敦煌書儀の中で一番長い写本である伯3442の「吉凶書儀」を注釈の写本として、『敦煌写本書儀研究』などの校録文を参考にしつつ、これまでの釈文に反映されていなかった異体字や記号に検討を加え、より正確な校録文を作成する作業を進めている。そして平成27年から「王羲之書簡を読む会」(代表:中川ゆかり)において共同研究を進めており、平成28年5月から本研究との合同研究会を立ち上げて毎月研究会を開催し、日本古代の言語研究・日本古代文学研究にも資するように、日本語による注釈の作業を継続している。 伯3442の「与子姪孫書」、「与外祖父母書」、「与舅舅母姨姨夫書」、「与表丈人及表姑姨表兄姉書」、「与表弟妹書」、「与女婿書」、「与妻父母書」、「与外甥孫書」、「与婦書」については翻刻、加点、語釈、意訳という作業を行った。それぞれの書簡の内容を解読し、言語表現の特徴、書簡用語の確定、その語義と機能、語に反映される人間関係などについて検討を行った。そして、分担者と研究協力者と共に、現地調査も実施し、現地のみで閲覧可能な資料を確認し、現地で貴重な文献資料や書籍を入手した結果、研究課題は大きな進展を得ることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
敦煌書儀を含む写本を収集し、敦煌書儀の全体像を把握した上で、敦煌書儀の中で一番長い写本である伯3442の「吉凶書儀」を注釈の対象として解読・注釈を行った結果、研究は順調に進捗した。伯3442の「吉凶書儀」(作者:杜友晋)は、上巻は吉書儀、下巻は凶書儀からなる総合的な書儀である。そのうちの「与子姪孫書」、「与外祖父母書」、「与舅舅母姨姨夫書」、「与表丈人及表姑姨表兄姉書」、「与表弟妹書」、「与女婿書」、「与妻父母書」、「与外甥孫書」、「与婦書」について、一つ一つの内容を解読し、言語表現の特徴、書簡用語の確定、その語義と機能、個々の語に反映される人間関係などについて検討を行った。合わせて、古代日本語の一次資料である正倉院文書の啓・書状や木簡、日本の古代文献資料にみえる書簡類に使用された用語や表現との比較検討をも継続中である。
|
今後の研究の推進方策 |
中国の敦煌書儀と日本の正倉院文書や木簡は、転写を経ない原初の文字資料である。従って、両者はともに文字の字体研究の資料としての価値が高い。8世紀の文化の中心であった長安を中心にして、西(敦煌)と東(奈良)に遠く距てられた地で、各々の文字の姿が変化しているのか、変化していないのか、中国の字書類と隔たりはあるのか、ないのか、この点を分析するために、形式・語義・表現・人間関係・語の特徴・訳文を掲載するだけではなく、写本の写真を活用した注釈書の完成を目指す。 平成29年度から日本古代散文の研究を専門とする研究者をメンバーとして加えた。さらに、日本古代における書状をも念頭に置きながら、引き続き日本語による敦煌書儀の注釈を行う。注釈をまとめて報告書を作成し、研究結果を公開する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
差額が生じた理由は、その一、現地踏査の期間が予定している期間より短縮したためである。その二、研究用の資料、現地踏査の時に調達した書籍等の費用は自費で支払ったためである。
|