本研究は、東アジア文化圏の成立経緯を究明する際、最も重視すべき「東アジア文選学史の成立及び日中独自文選学の形成」を研究課題とし、日本に現存する旧鈔本・和刻本などの文選資料群を整理して基礎研究資料とし、日中を中心とする東アジア諸国における文選学の変貌及び受容史に対する総合的な研究を行うものである。
本科研の最終年度として、ここまでの研究成果を踏まえながら、日本に現存する旧鈔本・和刻本などの文選資料群を整理して俯瞰的な研究を行い、また、日中を中心とする文選注釈史の異なる展開に対する総括的な研究を遂行した。具体的な成果は以下の通りである。①コロナウイルスの影響を受け、海外学者招聘などの一部計画を変更した。代わりに予定した國際共同研究をオンラインで実行し、本研究の研究成果を国内外の学会にて発信した。②引き続き本学所蔵の九条本文選を底本とし、日本に現存する文選旧鈔本資料群との校合を行い、おおよそ計画通りに三十巻本『文選』の本文に関する文字校勘を完成した。③平安時代から江戸時代までの古典籍、文集及び仏教文献に見られる文選に関する記録を整理し、隋唐文選旧注の東漸及び日本中世独自の文選学の形成に関する研究の総括を行った。現段階までの一部の研究成果を整理し、学術論文として国内外の専門誌に公表し、また、共著の『抄本、印本與小集、大集:抄印轉換與文學演變工作坊論集』(復旦大学出版社、2021年)を公刊した。今後は、九条本をはじめとする日本に現存する文選旧鈔本資料群に関する研究や、東アジア文選学史の形成及び変遷に関する研究を、それぞれ纏めて公刊することを図る。
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