本研究では、これまでほとんど顧みられることのなかった「粗悪本」に光を当てることで、日本における中国通俗小説の受容について、また中国通俗小説の出版に関する問題について考えるべく、国内に所蔵される中国通俗小説、特に明清時代に作られた『金瓶梅』の刊本について調査を行った。その結果、「第一奇書本」については、様々なバージョンが存在するものの、いくつかの系統に整理しうること、一方で龍谷大学図書館写字台文庫蔵本のような「つぎはぎ」されたテクストが存在することが明らかとなった。さらに調査の過程で浮上した問題として、こうした版本につけられる「批評」についても、初歩的な考察を行った。
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