研究課題/領域番号 |
16K02591
|
研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
木之内 誠 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (50195327)
|
研究分担者 |
大久保 明男 首都大学東京, 人文科学研究科, 教授 (10341942)
橋本 雄一 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (30305403)
平石 淑子 日本女子大学, 文学部, 教授 (90307132)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 歴史地図 / 満洲 / ハルビン / 都市の歴史的景観 |
研究実績の概要 |
ロシア、日本、中国の近代史が交錯した国際文化都市ハルビンについて、その多元多層的な都市文化景観の現況を把握するための現地調査を、前年度、前々年度の調査に引き続き、2018年9月にのべ約二週間にわたって研究メンバー全員の参加で実施した。事前にOpenStreetMap(OSM)をもとに調製した五千分の一市街ベースマップを手にしながら現地を踏査して、中国近代建築研究会他編『中国近代建築総覧・哈爾濱編』1992所収の指定建造物および、「哈爾濱市不可移動文物一覧」掲載の歴史的建造物などについての現況調査を進め、現況写真資料の記録を継続した。今回の調査では、これまでの現地調査で未踏査であった松花江対岸の太陽島のロシア式別荘地区、市街地南部の香坊の旧鉄路管理地などを中心に現況を調査した。また、「中東鉄路印象館」、「南崗博物館」などの展示施設を見学し、展示資料の撮影、関連資料の購入などを行ったほか、市内主要書店でハルビンの旧地図、歴史的写真資料などを収める書籍を購入した。省図書館附属蕭紅紀念館長ら現地の研究者と研究交流の機会を持ち、情報の提供を受けた。この現地調査の成果として、『中国近代建築総覧・哈爾濱編』所収の建造物については、これまでの調査結果と合わせて、若干の例外的な漏れを除いて、200箇所あまりについて基本的な調査を終え、現況写真資料を記録した。 現地調査と並行して、これまでに収集複写した各種のハルビン市街の歴史的な地図を精査して、今回制作される歴史地図上に示すべき項目をデータベース化する作業を継続した。 2019年3月には研究代表者が、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターおよび大学附属図書館において資料調査を行い、所蔵する関連資料の閲覧・複写をおこなった。 地図冊刊行への実質的なとりまとめ作業として、地図の解説項目の選定に着手し、一部の項目の原稿の作成を開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
我々研究グループの本課題に先立つ科研課題であった「大連歴史地図の制作」について、その成果の公表として大修館書店から『大連旅順歴史ガイドマップ』刊行の計画が具体化して進行し、これに想定以上の労力と時間を要したため、当初計画の遂行に遅れをきたすこととなった。これに加えてこの間、代表者と分担者それぞれに老親などの介護の負担がしだいに増してきたことも、計画遅滞の理由として挙げざるを得ない状況となり、研究期間の一年間の延長を申請することとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
補充的な現地調査を一、二回程度実施し、未調査物件の確認、精査を行い、データの整理と地図への入力作業を進め、解説項目の選定及び分担した項目の執筆を進める。地図の附録として掲載予定の、近代ハルビン年表の編纂に着手する。現存する歴史的建造物の現況を正確に図上に表現するとともに、市街地図に時間的な深みを与える方策の一つとして、かつての滞在者、生活者による紀行文、体験記、回想録などの文献資料からの資料抽出と図上での項目表示を進める。また、ハルビン学院在籍者など旧ハルビンでの生活経験をもつ体験者への取材も、その高齢化を考えれば緊急の課題として進める必要があると考える。地図を中心にすえつつ、それを補う的確な情報を、整理して読者に呈示すべく、コンテンツについての総合的検討をふまえて、書籍の最終的な形態を完成に向けて固めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
別項【現在までの進捗状況】欄に記載したとおり、計画の進行に相当の遅れが生じており、研究計画の一年延長を決定し、代表者他2名が年度末に予定していた現地調査の実施を延期した。次年度夏期にハルビンの最終現地調査を行い、その旅費として使用する予定である。
|