研究課題/領域番号 |
16K02594
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
中川 諭 大東文化大学, 文学部, 教授 (20261555)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 三国志演義 / 版本 / 二十四巻系諸本 / 明代の出版 / 遺香堂本 / 二刻英雄譜 / 鍾伯敬本 / 李漁本 |
研究実績の概要 |
本年度は資料の収集を中心に作業を進め、その一方で二十四巻系後期諸本のうちの遺香堂本についての研究を行った。 収集した資料としては、国内では天理図書館蔵の鍾伯敬本・国立公文書館蔵の二刻英雄譜、海外では中国国家図書館蔵の遺香堂本と李漁本、首都図書館蔵の李漁本がある。 遺香堂本について、イェール大学図書館蔵本(イェール本)・東京都立中央図書館蔵本(東京本)・北京大学図書館蔵本(北大本)・アメリカ国会図書館蔵本(アメリカ本)・張青松氏私蔵本(張氏本)が確認できた。そのうち北大本は北京大学図書館が移転中のため閲覧できなかった。他の4本のうちイェール本と東京本が同版で、イェール本の方が印刷が早いことが分かった。アメリカ本は図像しか残っていないが、イェール本の図像との比較の結果、版を異にし、アメリカ本の方が先んずる版本であることが分かった。また張氏本は本文の一部しか残っていないが、イェール本・東京本とは同版ではなく、この両本よりも先んずる版本であろうことが確認できた。遺香堂本の底本について李卓吾評本諸本と比較したところ、文字の異同から、遺香堂本の底本は李卓吾甲本の中の一本であろうことが分かった。 これらについて2016年8月に早稲田大学で開催された「第十五届中国古代小説・戯曲文献曁数字化国際学術研討会」において「関于遺香堂本《三国志》」と題して発表した(中国語で発表)。この学会で発表した論文は、中国で刊行されている雑誌『河北学刊』に掲載されることが決まっている。しかし雑誌編集部の都合により、号数・刊行時期は未定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
資料収集が少し遅れている。北京大学図書館に遺香堂本『三国志』が蔵されており、本研究を遂行するために、この本は是非とも閲覧調査する必要がある。しかし同館の古籍善本閲覧室が引っ越しのため当面の間閉館しており、閲覧できなかった。その他、尊経閣文庫蔵の『二刻英雄譜』の閲覧調査もまだ行われていない。 その他についてはおおよその資料も集めることができた。収集した資料をもとに、「版本比較プログラム」で利用できるように、画像データの整理、テキストデータの修正を行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度に収集した資料に基づく画像データの整理とテキストデータの修正を進め、早急に終える。整理・修正が完了したところで、「版本比較プログラム」を用いて二十四巻系後期諸本各版本のテキストを比較し、その結果から版本間相互の関係について考察を行う。あわせて李卓吾本との比較も行って、李卓吾本から二十四巻系後期各本への演変についても考察する。 2016年度中に収集できなかった尊経閣文庫蔵『二刻英雄譜』については、できるだけ早い時期に尊経閣文庫を訪れて閲覧調査する。北京大学図書館蔵「遺香堂本」については、同館の古籍善本が閲覧可能になった段階でできるだけ早く北京を訪れ、閲覧調査する。 2017年度の研究の中間の成果を、「第十六届中国古代小説・戯曲文献曁数字化国際学術研討会」において発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
中国国家図書館および首都図書館への出張が、校務との関係で年度末になってしまったため、年度内に執行できなかった。また天理図書館へ依頼した複写は大部なものとなり、時間がかかり、同館からの複写費請求が年度末になってしまったため、年度内に執行できなかった。また北京大学図書館で資料の写真撮影をする予定であったが、同館の善本閲覧室が引っ越しのため閲覧できていない。そのため同館で行う予定の資料の複写費用がまだ執行されていない。
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次年度使用額の使用計画 |
中国国家図書館および首都図書館への出張旅費と両館における複写、そして天理図書館蔵の資料の複写費用については、すでに執行手続き済みである。北京大学図書館については、同館の古籍善本が閲覧可能になった段階でできるだけ早い時期に同館を訪れて、資料の撮影を行う。
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