研究課題/領域番号 |
16K02604
|
研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
呉 世宗 琉球大学, 法文学部, 准教授 (90588237)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 朝鮮戦争 / 植民地主義 / 沖縄 / 脱植民地主義 |
研究実績の概要 |
本研究は韓国、在日朝鮮人、そして沖縄という三つの地域・社会の文学者が、朝鮮戦争期にどのような影響を戦争という事態から被り、また作品や評論、あるいは現実的な行動によって、そのせめぎ合いや重なり合いにいかに関与し、いかなる独自の文学的表現を生んだのかを比較検討するものである。 2017年度は、琉球大学図書館、沖縄県立図書館、沖縄県立公文書館、沖縄県内各大学図書館、沖縄県各市町村立図書館等で、(1)『沖縄タイムス』『琉球新報』『うるま春秋』『琉大文学』『月刊タイムス』『沖縄ヘラルド』『沖縄 思潮』『誌・現実』『脈』など、戦後沖縄で刊行された新聞雑誌における文学関連資料及び思想関連資料の調査 収集を進めた。またUSCAR の関連資料も主に沖縄県立公文書館にて収集を行った。また思想関連資料そして政治社会状況に関連する文献や資料の収集もあわせて行った。(2)戦後初期から文学活動を行った沖縄の表現者たちや、『琉大文学』で登場する若い書き手たちの作品や評論などの文献資料を収集した。(3)収集した資料を用いて、沖縄の文学者たちの意識の中で、いかなる脱植民地的/冷戦的価値や認識の相克が生じているのか、そして韓国における価値・認識の相克をめぐる表現とどのように異なる言説が生み出されたのかの考察を行った。研究成果は日本、沖縄、そして韓国で開催された学会や研究会で発表し、成果の還元を行うとともに来年度につながる有益なコメントをいただいている。また雑誌や大学紀要において成果を公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度は、沖縄県立図書館、琉球大学図書館の他にも、宮古・八重山をはじめとする沖縄県内各市町村立図書館やひめゆり資料館や沖縄県立平和記念資料館など各種 資料館、法政大学沖縄文化研究所(中野文庫)、沖縄大学図書館新崎盛暉文庫、西原町立図書館新川明文庫といった施設も利用し、計画通りの資料の収集を行うことができた。また日本だけでなく、韓国においても研究成果の報告を行い、多様なコメントを得ることができた。今後も資料の収集を継続し、批判的に検討を進める予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
2018年度は、(1)『新朝鮮』『青銅』『北極星』『解放新聞』といった、日本語と朝鮮語で書かれた雑誌や新聞を収集し、また文学関連資料及び思想関連資料の調査収集を進める。関連して日本の 戦後直後から文学活動を開始し、朝鮮戦争期も作品・評論を発表していた金達寿、許南麒、張斗植、呉林俊、金時鐘、金石範に関する資料調査収集を行う。(2)朝鮮戦争期の在日朝鮮人の文学者の動向を知るために、当時の組織である民戦と、非公然の組織であった祖国防衛委員会との関係について調査を行う。そのため民戦と祖防委に関する、機関誌『統一戦線』『朝鮮中央時報』『先鋒』『祖防の旗のもとに』といった資料を収集する。関連して、民戦および祖防委をその指導の下においた日本共産党の対在日朝鮮人方針に関する資料を、文化的側面に関するものを中心に収集する。(3)集めた資料をもとに、在日朝鮮人の文学者が、日本という異国の地での植民地的/脱植民地的/冷戦体 制的価値の葛藤のなか、いかなる言説を生み、それが韓国の文学者のそれとどのような点で重なり、また異なるのかを考察する。研究成果は学会や研究会などで報告し、成果を社会に還元する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定していた旅費の支出を先方に負担していただいたため残額が生じた。残額は、2018年度において自費で計画していた資料収集のための出張で使用する予定である。
|