2018年度は、本研究計画の目的に沿って朝鮮戦争期の在日朝鮮人文学者の動向や作品についての資料収集とその検討を行った。資料の収集は、国会図書館、東京都立図書館、日本近代文学館、東京大学や一橋大学などの附属図書館、朝鮮奨学会附属資料室、在日韓人歴史資料館等をまわった。 (1)『新朝鮮』『北極星』『解放新聞』といった、朝鮮戦争期に日本語と朝鮮語で書かれた雑誌や新聞を収集し、また文学関連資料及び思想関連資料の調査収集を進めた。また金達寿、張斗植、洪允杓、権敬沢、呉林俊などの文学者の作品の収集も行っていった。 (2)朝鮮戦争期の在日朝鮮人の文学者の動向を知るために、当時の組織である民戦と、非公然の組織であった祖国防衛委員会(祖防委)との関係についての調査を行った。その際、機関誌『統一戦線』『朝鮮中央時報』『先鋒』『祖防の旗のもとに』といった資料を、またあわせて日本共産党の対在日朝鮮人方針に関する資料を収集した。 (3)集めた資料をもとに、在日朝鮮人の文学者が、日本という異国の地での植民地的/脱植民地的/冷戦体制的価値の葛藤のなか、いかなる言説を生み、それが韓国の文学者や沖縄の文学者のそれとどのような点で重なり、また異なるのかについての考察を行った。 得られた研究成果は、韓国・済州島や沖縄での学会等の場で報告し、また研究代表者が所属する大学で関連するワークショップを開催し、そして論文や書籍などで発表した。
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