本研究の目的は、日本の植民地となった台湾と韓国に現われた日本語文学について、その発生から終焉までの様相を明らかにすることである。日本語小説を書いた台湾の謝春木と韓国の李光洙を中心に研究してきたが、最終年度を迎えて、李光洙に関する2冊の本を刊行した。単著『日本語という<異郷>―李光洙の2言語創作』(ソミョン出版)と共著『李光洙後期文章集Ⅲ 詩・随筆・座談・記事・書翰』(ソナム)である。 前者は、李光洙の最初の日本語小説から植民地末期の日本語作品までを概観し、とくに末期の小説を分析したものである。 後者は、西江大学の研究者と協力して西江大学韓国学資料叢書として刊行したもので、2017年度に『李光洙後期文章集Ⅰ小説』、2018年度に『李光洙後期文章集Ⅱ 評論・論説』を出し、今年度で完結した。今回刊行した資料は1938年から1945年まで李光洙が書いた詩、書翰、新聞記事、書翰である。3巻とも日本語文には翻訳をつけた。李光洙はこの時期多くの文章を日本語で書いたため、各巻とも1000頁を越える大部となった。研究期間を1年延ばして3巻を刊行することができた。
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