研究成果として以下の知見を得た。 日本の植民地となった韓国と台湾の作家は日本語を通して西洋近代文学に出会った。韓国と台湾で最初の近代作家とされる李光洙と謝春木の処女作がともに日本語で書かれていることがそれを象徴する。だがハングルという文字があった韓国より、日常語を書写する文字のなかった台湾において日本語はより深く浸透した。植民地末期には皇民化政策により多くの日本語小説が書かれ、植民支配の終焉後、韓国の若い作家は身体に刻印された日本語のトラウマに長く悩まされた。一方、台湾の作家の多くは解放後も日本語で書こうとし、国民政府の苛酷な北京語強制のため創作から離れることをよぎなくされた。
|