研究課題/領域番号 |
16K02606
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
奥田 恭士 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (10177173)
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研究分担者 |
井上 靖子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (00331679)
保坂 裕子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (00364042)
糟屋 美千子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (20514433)
内田 勇人 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (50213442)
寺西 雅之 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (90321497)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 多面的ナラティブ分析 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、先行研究の成果に基づいてデータ収集を行うとともに、これと並行してナラティブの質・量的な分析およびテクスト分析を進めた。また、研究グループ全体の成果については、二つの学会でシンポジウムを行い、研究課題の深化を目的として公開・討議した。加えて、研究代表者、研究分担者ごとに個別の成果発表を積極的に開始している。第一に、グループの活動として、2017年9月9日、日本質的心理学会第14回大会において、研究代表者および研究分担者全員の企画によるシンポジウム『多様なナラティヴ・データ分析手法の可能性を問う-質的心理学と文学・文体論との邂逅-』(首都大学東京荒川キャンパス)を開催し、分析手法の新たな可能性について報告と問題提起を行った。質的心理学分野の研究者との質疑応答を通して活発な議論が展開されたことから、本研究課題に対する関心や期待度の高さを再確認すると同時に、今後の課題遂行に対する多くの貴重な示唆が得られた。第二に、2018年3月10日、日本国際教養学会第7回全国大会において、研究代表者・奥田恭士と研究分担者・寺西雅之によって企画・立案したシンポジウム『文学は医療に貢献できるか~物語・文体・認知の視点から~』(鶴見大学鶴見キャンパス)を開催した。このシンポジウムの新規性は、科研グループが招聘した小比賀美香子氏(岡山大学医学部総合内科学講座助教)の基調講演により、医療現場におけるナラティブの意味と活用例について具体的な問題提起がなされたあと、それを軸として科研グループから奥田・寺西、それに奥聡一郎・関東学院大学教授を加えて、物語論および文体論の視点から共通テクストおよび個別テクストに関わる具体的な分析事例を提示した点にある。異なる専門分野研究者により構成される当該学会において、多彩な議論が展開され、本課題にとって有益なシンポジウムであったと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、上記「研究実績の概要」で述べた二つのシンポジウムに加えて、研究代表者、研究分担者ごとに精力的な成果発表を開始した。研究代表者・奥田恭士は、「ライフレビューのSummaryに関する物語論的考察-介護老人保健施設入所者のもう一つの事例-」(JAILA Journal,vol.4)において「分析手法の確立」に関する知見を整理し、また「文学研究への応用」という課題に関しても、「バルザックの「代理的な経験」はどこにあるか?-ヘンリー・ジェイムズの視点から-」(『兵庫県立大学環境人間学部研究報告』第20号)において、方法論的展開を試みた。研究分担者のうち、井上靖子は「南インドの床絵コーラムについての分析心理学的考察」(『ユング心理学研究』)、寺西雅之は「英語学習教材としてのジェイン・オースティン―Sense and Sensibility の複数のテクスト分析から」(JAILA Journal,vol.4)において、それぞれの視点から本研究課題に関する考察を深めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、引き続きナラティブ・データの収集を行うとともに、これまでは言語化しにくいと思われていた経験を含め、従来の内容面の分析に加えて、物語論・文体論・ディスコース分析の観点から、その技法面の分析との照合を試みることにより、分析手法のブラッシュ・アップを進め、文学研究に関する新たな発展の可能性を模索していきたい。また、29年度に引き続いて、各種学会、専門雑誌などで成果発表を積極的に行う。本研究の活動と成果に関しては、前年度と同様、学会広報等のホームページを活用しながら、本研究グループ以外の研究者および広く社会からのフィードバックを得た上で、本研究活動に反映していく。最終的には著作物あるいはデータベースの形で、まとまった研究成果報告をおこないたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)平成29年度は、おおよそ当初の計画通りの執行であったが、各研究分担者により次年度での経費使用の希望があったため、一部を繰越とし、グルー プ全体では予定の7%程度(75,813円)を次年度繰越とした。使途は、設備・備品費として、ナラティブ・データ収集および分析のための機器、 先行研究に関わる専門書・雑誌等の書籍費、プリンタなど周辺機器に使用する消耗品費に加えて、国内・国外旅費、また、研究分担者によりナラティブ研究上必要と見なされる研修費用などである。 (使用計画)次年度研究費の使用計画としては、引き続き分析手法に関する専門書など書籍費およびデータ記録メディアを含む周辺機器消耗品費に加えて、国内・国外旅費、データ提供や分析に関わる謝金と人件費が必要となる。また、グループ全体の研究成果を発信するために、学会・シンポジウム等への参加および開催費用を見込んでいる。また、研究成果発表として「報告書」あるいは「データベース」の作成に関する費用も予定している。
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