研究課題/領域番号 |
16K02609
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
牧野 陽子 成城大学, 経済学部, 教授 (70165687)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ウィリアム・グリフィス / ラフカディオ・ハーン / 民話 / 再話 / 来日外国人 / 外国人の日本観 |
研究実績の概要 |
本研究は、明治三年に福井藩のお雇い外国人として来日し、帰国後は牧師をしながら日本関係の著述を多く残したアメリカ人ウィリアム・E・グリフィス(William Elliot Griffis, 1843-1928)の作品をひもとき、意味を問い、その日本体験の再評価をめざすものである。 これまでグリフィスについては伝記的、実証的研究が主だったといえるが、本研究では代表作『皇国』以外の、これまで取り上げられることの少なかった民話集や、東京時代の日記、手紙、メモ類などの分析と解釈に重点をおくことにした。 本年度は、特にグリフィスの創作民話を、再話作品として読み、そこからグリフィスの日本観を浮き彫りにすることをえた。再話にあたって素材としたいくつかの日本の伝承、さらにその源流とされる中国の伝承を分析することで、それぞれの背後の日本の伝統的な自然観を明らかにし、そのうえでグリフィスの日本観の投影された民話の魅力を見出すことができた。民話の分析に関しては、民俗学の研究成果、古代中国の伝承との比較研究の成果をも取り入れることで視野が拡大され、大きく比較文化論の枠組みで捉えることができた。また、グリフィスが福井に取材した地元の伝承や民間信仰など、創作民話の素材になりえた断片的な資料や、知識や見聞についても調査を行った。 さらにグリフィスの宗教観については、チェンバレンやラフカディオ・ハーン、イザべラ・バードなどとの比較分析を通して、グリフィスの独自の日本理解の形を見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
民話の分析がほぼ予定通りに進んでいる。日本の民俗学の研究成果を取り入れつつ、晩年のウェールズ地方の民話の再話の仕事と比較検討することで、大きく比較文化論の枠組みで捉えると同時に、グリフィス自身のアイデンティティの問題を浮き彫りにすることができた。何よりも、独自の言語作品としての魅力を見出し、明らかにすることができたのがよかった。また福井に取材し、素材になりえた原話、知識や見聞についても調査を行った。現地の資料館をはじめ、滞在した福井市を中心にグリフィスが訪れた神社仏閣をたずねることができた
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今後の研究の推進方策 |
東京時代の、明治期のエリート学生たちとの交流の全貌をとらえることのほうに重点を移していく。グリフィス関係資料のマイクロフィルムの読み解きを進め、グリフィスの日記、手紙、メモ等、膨大な資料をこれまで取り上げられなかったものに重点をおきながら判読していく。アメリカにある関連資料の調査は、下準備を十分に行ったうえでいく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
福井出張は、招待を受けたため、旅費が発生しなかった。アメリカ出張は、大学の学務との日程上の調整が難しかったこともあり、下準備をより十分に行ったうえで行くように予定を変更したため。マイクロフィルムその他資料の整理は、自分で少しずつ行ったので、アルバイトを頼まなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
地方出張を行ない、グリフィス関連の福井その他での資料を調査する。アメリカのニューイングランドでの調査、つまりラトガース大学所蔵の資料および、宣教師として勤務した教会での調査を行う。アルバイトを頼んで資料整理をスピードアップする。
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