研究課題/領域番号 |
16K02611
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研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
渡辺 直紀 武蔵大学, 人文学部, 教授 (80409367)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | プロレタリア文学 / 植民地朝鮮 / 林和 / 芸術大衆化論争 / リアリズム小説批評 |
研究実績の概要 |
植民地朝鮮のプロレタリア文学と日本との関連様相に関する研究を前年度に引き続き進めた。その成果として最も大きなものは、単行本『林和文学批評――プロレタリア文学と植民地的主体』(韓国・ソミョン出版、2018.12/韓国語)の刊行である。植民地朝鮮のプロレタリア文学団体「KAPF」(朝鮮プロレタリア芸術同盟)の委員長を歴任し、詩人、文芸評論家、文学史家、映画シナリオ作家、俳優などとしても活躍した林和の文学論を、1920年代末の芸術大衆化論争、物語詩の主体、リアリズム小説批評の原理、民族語論の外延と内包、文学史の方法と「民族」概念の再編、叙事詩的なものと映画史の構築、などの観点から検討した。この成果は追って日本語でも刊行する予定である。また、関連の学会発表を2回、関連の新聞記事の執筆を1本、行うことができた。うち、中国海洋大学(中国・青島)で行った発表では、植民地朝鮮の作家、李光洙と金史良の日本語創作について中国の研究者らと意見を交換するとともに、同時代のプロレタリア文学の文学者たちの創作努力とどう交差するか議論できた。台湾のCenter for Chinese Studiesで行った発表では、1920年代末に朝鮮で行われた芸術大衆化論争と、同時期に台湾で行われた郷土文学論争の比較を行い、当地の研究者らと言語・文体選択と読者の問題について充実した議論を行うことができた。――本年度は従前の計画では最終年度であったが、代表者がサバティカルでソウル・高麗大に滞在し、関連の研究打ち合わせや研究会を、別途の旅費の申請なく開催することができたので、研究費の大幅削減が可能であった。その研究費を用いて本研究の目的をより精緻に達成するための研究期間の延長申請を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書において前年度に予定していた植民地朝鮮のプロレタリア文学者・林和についての研究を、予算の執行をすることなく進めることができ(上述)、またその成果を単行本として刊行することができたが、映画事業の調査は完了できていないため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度(2019年度)を最終年度として、植民地朝鮮の映画事業についての追加研究を1年かけて推進する。この映画事業には、同時期のプロレタリア文学者たちも多く関与したので、これまでに行ってきた研究の延長線上でさまざまな議論を深めることができるだろう。また、本科研費研究全体の成果のとりまとめも行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は代表者がサバティカルで、韓国・ソウルで10か月、1か月台北、1か月ロサンゼルスで研究を遂行し、旅費その他で予算を執行しなかったため、1年分の予算をすべて次年度用に繰り越した。次年度の研究を進めるための旅費や資料購入費等として使用する計画である。
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