研究課題
基盤研究(C)
本研究は1990年代に新たな分析理論として出発したクィア理論を、日本文学研究の上に照らしだし、新たな批評理論の可能性と実践を、国際的な共同研究のもとに実施したものである。クィアネス(クィア性)を作品批評の一つの軸と設定することによって、文学批評の地平は大きく変化していく。本研究で開催したワークショップや講演会、シンポジウムはその一面を拓いていったものと考える。特に1)ジェンダー配置の不等性2)災禍と女性配置3)クィア理論と情動理論の融合、についての、新しい知見を得たことが主たる成果である。
日本文学・文化研究、クィア理論研究
本研究では主に現代日本文学の作品をとりあげ、そこに胚胎するジェンダーの問題に注目、それらをクィア理論によって読み替え、また同時にその問題点を考察していくことに主眼が注がれた。特に3:11以降の言説に見られる不当な女性配置の問題はここで前景化した。また一方にそれらを囲繞する社会的背景を剥出しながら、その身体的・心理的回復を目指そうとする情動の力についても、多くの知見を得ることができた。それは国際的な共同研究による成果とも言える。