研究課題/領域番号 |
16K02624
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
堀江 薫 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 教授 (70181526)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 中断節 / 言いさし / 語用論 / 推論 / 脱従属化 / 主節 / 複文 / 言語類型論 |
研究実績の概要 |
本年度は、日本語、韓国語、中国語、インドネシア語などのアジア言語を中心として、言語類型論と語用論の観点から、「脱従属化(insubordination)」と命名され、日本語学では「言いさし」として知られる文法現象(例:目がかゆいし!)の語用論的機能について言語間でどのような相違が見られるかを分析し、成果を発表した。脱従属化現象は英語のようなヨーロッパ言語や、中国語等のアジア言語においては、それほど高頻度に観察されず、言語類型論においても体系的な研究が遅れていた。それに対して、日本語は、「言いさし」という用語・概念が定着していることからも、当該現象が高頻度に観察され、種類も豊富であり、語用論的機能も多様である。代表者は、本研究計画において、従来の「脱従属化」「言いさし」研究の中心であった「副詞節(例:「~ば」条件節):早く行けば。」からの脱従属化現象のみならず、日本語や韓国語において発達している「補文節(例:「の」「こと」、韓国語の「kes」による名詞化節:早く行くこと(だ)。)」からの脱従属化や、通言語的には「関係節」に相当する、通常の語彙的意味を有する普通名詞(例:「ドア」:レンコバスに飛び乗る。閉まるドア。)を主要部とする名詞修飾節が単独で生起するような現象にも対象を広げた。さらに、日本語や韓国語において観察される脱従属化のやや特殊なタイプとして、日本語の「~みたいな。」のような述語の連体形が文末に生起する現象とその語用論的機能も考察した。これらの研究成果を基調講演、口頭発表、論文発表の形で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、アジア言語を中心とする諸言語の中断節の語用論的機能、語用論的拡張に関する研究成果を国内外の学会、研究会における基調講演において発表し、国内学会(認知言語学会)においても共同で口頭発表することができた。『語用論研究法ガイドブック』(ひつじ書房)という語用論の研究方法に関する研究書において、「対照語用論」という章を執筆し、中断節の語用論的機能に関する研究成果を発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、(I)当該言語の類型論的特徴(例:語順)と、その言語でどのタイプの脱従属化が生産的に観察されるかの間にどのような相関関係があるか、(II)同じ類型論的な特徴を有する言語間(例:英語とフランス語、日本語と韓国語)で脱従属化の頻度や機能分化に差が見られる場合、それはどのような要因によるものか、を考究し、その成果を学会発表、論文発表の形で還元していきたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
日本学術振興会学術システム研究センター専門研究員としての任期最終年度の業務が多忙を極め、当初予定していた国際学会出張に参加できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
成就した業務も2017年3月末で無事終了したため、2017年度は複数の国際学会に出席し成果発表をする計画である。
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