研究実績の概要 |
2018年度は、すでに収集してあるウガンダ西部に話されるNyoro語の動詞構造の分析を進め、とりわけ動詞活用と声調との関係を分析した。さらに2017年度に開始した南隣のKiga語の現地調査を精力的に進め、そのデータ収集と分析を行った。そして約1500項目からなる語彙調査票の全項目を終了した。現在、Kiga語語彙集作成のため、記述の見直しと索引作りを行っている。この語彙集は、単に単語とその意味を記載するだけでなく、音韻情報や統語情報など様々な文法的項目のデータを豊富に集めてある。さらには、挨拶表現や様々な慣用表現なども記載してある。Kiga語は一般的に隣のAnkore語と同じように見られることの多い言語であるが、その声調はAnkore語とはかなり異なることが明らかとなった。例えば、Kiga語では単独独立形では高声調が1音節にしか現れないが、Kiga語では2音節に現れる場合がある(1参照)。またAnkore語では基底の語末の-HL形と-LH形は表層単独形ではいずれも-HLとなり区別されないが、Kiga語では区別される(2参照)。 (2)においてAnkore語orurimiLLHL「舌」とKiga語orurimiLHLL「舌」は基底ではいずれも-LLHLであり、Ankore語amariraLLHL「哀悼」とKiga語amariraLLHL「涙」は基底ではいずれも-LLLHである。Kiga語においてはAnkore語より高声調の予期が激しいことが見て取れる。 (1)Kiga: egiritaLHHL, Ankore egiritaLHLL「カミソリ」 Kiga: ekishushungwaLLHHL, Ankore: ekishushungwaLLHLL「ふすま」 (2)Ankore: orurimiLLHL「舌」, amariraLLHL「哀悼」 Kiga: orurimiLHLL「舌」, amariraLLHL「涙」 動詞に関しては調査は端緒についたばかりであるが、活用要素の-ra-が現在を示すなどRwanda語と共通する部分があることが明らかとなった。
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