本研究課題の「統語構造の階層性および非均一的な言語現象に関する包括的研究」は本年度が2年目にあたる。本年度は、複雑な要因の絡む非均一的な言語現象をいくつか体系的にとりあげ,説明理論の構築を目指して研究を進めた。本年度は、特に、経験的な事実の発掘を中心にして、理論的考察を進め、研究目標達成のために必要となる研究の基盤を確立することに努めた。具体的には以下のように研究を進行させた。まず、基本的な研究として、言語現象を的確に記述できる理論開発のための文献の調査をおこない問題点を整理した上で、研究の方向性に関する検討をおこなった。本年度は、特に、日本語および英語に加えて、シンハラ語を加えて、研究の対象となる言語をひろげ、理論的に重要になるいくつかの構文の比較対照をおこなった。本年度の海外の研究発表としては、ニュージーランド言語学会におけるシンハラ語の非項依存関係についての発表、そして中国北京で開催されたカートグラフィーの国際言語学会におけるシンハラ語の節の上部構造についての研究発表がある。この成果は学術雑誌Glossaに掲載された。また、資料収集および意見交換のためにアメリカで行われたJapanese/Korean Linguisticsにも参加した。さらに、シンガポール国立大学のコロキアムでの発表および意見交換・資料収集をおこなった。国内においては、慶應大学の慶應言語学コロキアムにおいての格と統語構造に関する研究発表、国立国語研究所でシンハラ語のとりたて表現の研究発表をおこなった。
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