研究課題/領域番号 |
16K02630
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
品川 大輔 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (80513712)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | バントゥ諸語 / チャガ諸語 / 形態論 / 形態統語論 / 言語類型論 / マイクロ・バリエーション / 言語学 |
研究実績の概要 |
2017年度前半においては,国内での研究成果発信に重点を置き,主たるものとして2件の学会発表を行った(日本アフリカ学会および日本言語学会).いずれも,対象言語はキリマンジャロ・バントゥ諸語(KB)ではないが,とくに後者については当該科研におけるミクロ類型論(micro-typology)によるバントゥ諸語の分析の成果が反映されている. 後期については,当初計画どおり,ロンドン大学SOASに研究拠点を移した.滞在中は,SOAS側のパートナー・プロジェクトであるMorphosyntactic variation in Bantu: Typology, contact, and change(PI: Prof. Lutz Marten)に参画する形で研究活動を行った.同プロジェクトおよびMarten教授との共同研究活動の成果として,Oxford Guide Book of Bantu Languagesに掲載予定の章論文を含む3本の原稿執筆,SOASにおけるセミナー発表3本(SOAS linguistics departmental seminar series,およびSOASプロジェクトの最終ワークショップでの発表を含む)を行った. タンザニアでの言語調査は,12月末から1月末の期間,キリマンジャロ州ロンボ県およびモシ・ルーラル県において,ロンボ語およびウル語の焦点標示(focus marking)形式に関する集中的な調査を行った.その成果は上述の論文の一部に反映されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書に示された,2017年度の研究計画の要点は次の二点である. i) SOASプロジェクトにおいて整理されることになるパラメータの拡大と検証の議論に参加する. ii) KBについてのドキュメンテーション調査を継続するとともに, 本研究課題独自のものを含む,上述の形で検討されたパラメータに従った記述調査を行う. 前者については,本年度後期のSOAS滞在期間において,定期的なプロジェクト・ミーティングに参加し,研究発表を含みプロジェクトにおける議論に参加した.ただし,プロジェクトの研究進捗は,当研究課題の調書作成時の想定を超えて展開しており,滞在時にはすでに142のパラメータが設定されている状態であった.したがって,パラメータ自体に関する議論はそれほど多くはなく,むしろそれを用いた分析に関する議論,またデータベースの設計に関する議論が主であった.そのような状況において,これまでの研究成果を発信・共有する形で,プロジェクトの研究活動に一定の貢献をなしたと考えている. 後者については,12月末から1月末までの1か月の現地調査を,当初目的に従った形で遂行した.パラメータに従ったデータ収集はすでに一定のレベルで達成されていたが,その補足的な調査を行うともに,焦点標示に関する現象について独自のパラメータを設定する形で調査を行い,有意義なデータを収集した. これらに加え,上述のようにSOASにおいて3本の研究発表を行うなど,研究課題の進捗としては順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は研究計画の最終年度であり,成果とりまとめおよびその発信に注力する.ここまでの進捗が想定以上に進んでいることもあり,すでに7月に南アで開催される国際言語学者会議(International Congress of Linguists, ICL20)および国際バントゥ諸語学会(International Conference on Bantu Languages, Sintu7),さらには9月にモロッコで行われる世界アフリカ言語学会議(World Congress of African Linguistics, WOCAL9)での研究発表がすでに決まっている.また,上述の3本の論文が順次公刊される予定になっている.これらには当初計画には含まれていないものもあることもあり,エフォート調整の観点から,研究計画調書において予定したウル語のreference grammarの出版については見送らざるを得ないと考えている.ただし,当科研と研究課題を共有し,報告者が所内担当として参画する研究プロジェクト「バントゥ諸語のマイクロ・バリエーションの類型的研究(フェーズ1)」(東京外国語大学アジア.アフリカ言語文化研究所共同利用・共同研究課題)の成果として,同プロジェクト参加者による10言語ほどのデータを142の形態統語論的パラメータ(上述のSOASプロジェクトによる)ごとに編纂する資料集を出版することになっており,その編集を行うとともにウル語およびロンボ語のデータを提供する計画である.
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度に本予定していたSOASへの研究滞在は,所属機関において採択された日本学術振興会「頭脳循環を加速する戦略的国際研究ネットワーク推進プログラム」(「危機言語・少数言語を中心とする循環型調査研究のための機動的国際ネットワーク構築」,代表:中山俊秀)による任務を平行的に行ったことから,そのための諸経費が同プログラムから支出されたことによる. 使用計画については,成果発信(出版)をより効果的に行うための費用(編集補助費,また編集に必要な物品費)に支出する予定である.
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