研究実績の概要 |
2018年度は,本研究課題の最終年度として,研究成果の取りまとめと発信に重点を置いた.本課題を駆動させる両輪は,i) キリマンジャロ・バントゥ諸語についての記述・ドキュメンテーション研究と,ii) 通バントゥ諸語レベルの構造的マイクロバリエーションのミクロ類型論的な分析である.i)に関しては,前年度にvisiting scholarとして参画したロンドン大学SOASの研究グループが開発した142の形態統語論的パラメータに従ってまとめたロンボ語およびウル語の記述資料の公刊を,その最大の業績として挙げることができる(Shinagawa and Abe (eds.) 2019. Descriptive Materials of Morphosyntactic Microvariation in Bantu, ILCAA所収). ii)に関する業績としては,キリマンジャロ・バントゥ諸語のデータを出発点として,否定表示とフォーカス表示に関するパラメータ間の連動関係に関する分析を国際言語学者会議(International Congress of Linguists,2018年7月,ケープタウン)で,また広義のimperfectiveアスペクトを表示する形式としての*-agの歴史的発達段階に関する分析を世界アフリカ言語学会議(World Congress of African Linguistics,2018年8月,ラバト)で,それぞれ発表した.このうち前者については,上述のSOASプロジェクトによって構築されたバントゥ諸語マイクロバリエーションに関するデータベースを参照する形で通バントゥ類型論として発展させた論考を国際共著論文として論文化している.
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