研究課題/領域番号 |
16K02631
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
上山 あゆみ 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (70221801)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 生成文法の経験的基盤 / 容認性判断調査 / 文法理論の精度の評価 / 統語意味論 |
研究実績の概要 |
本プロジェクトは、文法理論の精度を評価するためのデータセットの作成を目標とするものである。文法性の判断は個人差が大きいため、従来は、このようなデータセットの作成は現実味が乏しいと考えられてきた。これに対して本プロジェクトでは、次の3点に着目することによって、頑健なデータをよりわけ、より広い範囲の研究者にその成果を供することを目指している。:(i) 予測の成否を判断する、解釈のポイントが明示されていること、(ii) 指定された解釈が不可能と判断されるべき例も含まれていること、(iii) 解釈容認の相関関係を含むデータであること。 本プロジェクトの活動には、大きく分けて、データセットの体系的な構築についての理論的基盤を構築する「基盤構築」のタスクと、EPSAシステムの活用により、実際のデータセットを作り、それぞれのデータセットが評価基準として用いられることの妥当性を評価する「調査」のタスクとがある。 平成28年度は、主に「基盤構築」のタスクを中心に行った。まず、本プロジェクトの理論的基盤となる考え方を、より広い範囲の研究者に理解してもらえるよう、工夫を重ねた。また、基盤構築のためには、1つ1つの語彙特性の整理が不可欠であるとの理解に至り、コーパスも利用した研究に着手し、その知見を今後蓄積していくことができるよう、態勢を整えた。また、「調査」タスクに関しては、次年度からの調査を効率よく行うために、クラウドソーシングを利用した調査方法のパイロットスタディを行い、十分にノウハウを獲得することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、「基盤構築」のタスクについては、全般的に非常に順調に進んでいる。特に、これまでの統語規則についての知見に加えて、それぞれの語彙特性の研究が軌道に乗ってきたため、より包括的な見地から課題に取り組むことができるようになってきた。 本プロジェクトを特徴づけている方法論のプロモーションも精力的に行なっている。大阪大学での3回の研究会に加え、日本語文法学会におけるシンポジウムでは、多数の参加者から「非常にわかりやすかった」との反応を得ることができた。また、2015年に出版した『統語意味論』の書評が学会誌に掲載され、他のいくつかの学会誌でも書評の掲載が予定されていると聞いている。 それに対して、「調査」のタスクに関しては、当初予定していた方法での調査が経理事務上の問題でスムーズに実行することができず、プランの立て直しを余儀なくされた。いくつかの試行錯誤を経た後、幸い、もともとのねらいに近い調査方法を実行することができる状態にたどり着いた。次年度からは、大規模な調査を行うことが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度以降も、「基盤構築」のタスクと「調査」のタスクの両面から課題にせまっていく。 「基盤構築」のタスクとしては、まず、統語意味論の構造構築規則の検証をコンピュータを用いてできるようになるよう、構造解析器(parser)のプログラミングを進める。また、引き続き、レキシコン(辞書)の充実につとめていく。 「調査」のタスクについては、28年度の予定が遅れてしまったので、29年度にあらためて「文内の照応関係」に関わるデータセットの検証に取りかかる。すでに、かなりの人数の協力者が確保できており、包括的な調査ができる状態になっている。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査方法の変更を余儀なくされたため、当初予定されていた「人件費/謝金」が大幅に減り、そのかわり、語彙特性に関する研究のため、研究打ち合わせ会が必要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は少額であり、特に使用計画の変更は必要ないと考えている。
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