研究課題/領域番号 |
16K02636
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
武藤 彩加 広島市立大学, 国際学部, 准教授 (00412809)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 味覚を表す表現 / 普遍性 / 相対性 / 広告テキスト / テクスチャー表現 / 五感 / 事態把握 / 生理学的普遍 |
研究実績の概要 |
今年後実施した研究調査は次の2件である。(1)母語話者 60 名(コンケン大学)を対象とした味表現使用状況の意識に関するアンケート調査の実施(調査協力:人文社会学部長・Patra Mui教授、Ratchanee Piyathamrongchai講師) 武藤(2011)で作成した調査票を利用し、日本語の味表現 221 種に対応した形で作成した150 の食品リストをもとに、インフォーマント一名につき 50 食品についてその食品の味を表現するのにどのような味表現が可能であるのかを自由に記入するよう依頼した。現在は、調査結果をすべて文字化し分析に入るための電子資料を作成中である。(2)タイの広告で使用されている味の表現の収集と分析 食品に関する広告テキスト(web 広告,新聞広告等に記載されているもの)、100 事例の中から味に関する表現を抜き出しリスト化する。調査対象とした食品は次の通り。 1.甘味系:①チョコレート、②アイスクリーム、(その他、ココナッツミルク、ケーキなど甘いデザート系)2.辛味系:③チリソース(カレールー)、④スパイス・タレ類、(その他、のど飴や辛味の調味料)3.苦味系:⑤コーヒー、⑥ビール(その他、ビターチョコレートなど)4.酸味系:⑦ヨーグルト、⑧マヨネーズ(ドレッシング類)、(その他、酸味のあるスープやビネガーなど)5.旨味系:⑨スープストック(コンソメ)、⑩ピザ、(その他、カップスープなど)6.視覚系:⑪ジャム、⑫ジュース、(その他、ゼリーなど)7.食感系:⑬パン、⑭パイ(ビスケット)、⑮パスタ、(その他、クラッカーなど)8.聴覚系:⑯ポテトチップス(スナック菓子)、⑰インスタントラーメン、⑱フライドチキン(冷凍食品)、(その他、冷凍食品)9.嗅覚系:⑲お茶、⑳ワイン、(その他、チーズ、酒類など)、以上、20商品×5例の計100例
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在は、タイのコンケン大学で得たデータをすべて文字化し分析に入るための電子資料を作成中である。また広告テキストの調査についても、結果が出そろい次第、上記の調査の結果と合わせて、表現の種類や使用回数を分類表のカテゴリをもとにまとめ、対象となっている商品等の情報についても情報をまとめる。その際、創造的な表現(広告テキスト)および慣習化された表現(母語話者に対する調査結果)ともに、収集された用例を分類表によりカテゴライズし、タイ語の味表現の特徴(分布や広がりなど)を分析し、タイ語おける味覚語彙の体系を明らかにする。
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今後の研究の推進方策 |
今年度と同様、広告および母語話者への調査を実施する。今後の調査予定地は次の通りである。①平成29年度:トルコ:チャナッカレ・オンセキズ・マルト大学(調査協力:日本語教育学科・学科長、aydin ozbek教授)②平成30年度:インドネシア教育大学(インドネシア, DEDI, Sutedi 教授)③平成31年度:オルレアン大学(フランス、大島弘子文学部助教授)④平成32年度:エストニア:タリン大学(協力:Allari Allik 講師)、広告データ収集協力:㈱日本デイリー通信社(担当:浅海明男氏) 以上の調査で得たデータをもとに、タイ語、インドネシア語、フランス語、トルコ語、エストニア語の味覚語彙の全容を体系的に示し、その結果に、過去に調査を行った 4つの言語(スウェーデン語、英語、中国語び日本語)を加え、計9言語の味覚語彙の全容を体系的に示し、共通する普遍的要素を明らかにする(味覚語彙にみられる共通性は味覚器官の共通性に動機づけられるか、第6の味覚とされる脂味、カルシウム味、コク味、そして旨味は結果にどう現れるか、味覚語彙の使用に性差はみられるか等)。また、9つの言語の相対性を明らかにする(もっとも豊かな語彙範疇を持つ言語はどの言語か、その逆はどうか、多様性の中に序列(含意的普遍特性)がみられるか、味覚語彙のプロトタイプ構造はどうか等)。さらに、味覚から他の感覚への転用における普遍的要素(共感覚的比喩の一方向性仮説)に関する検証も行う。各々の言語話者の事態把握の仕方、および言語相対性仮説をめぐる諸問題についても検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度以降の研究調査先はトルコ、フランス、エストニア等、遠方の地域が予定されており、費用がかさむことが予想される。そのため今年度は、可能な限り切り詰めた結果、次年度使用額が生じた。しかし、平成28年度に計画した研究調査はすべて予定通り実施し、研究成果についても国内外の学会において、また複数の論文や著書において発表済みである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度のトルコにおける調査、および平成31年度のフランスと平成32年度のエストニアで実施する研究調査において、未使用額はすべて使用する見込みである。
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