研究課題/領域番号 |
16K02636
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
武藤 彩加 中部大学, 人文学部, 教授 (00412809)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 五感 / 味を表す表現 / おいしさのカタカナ語 / おいしさの表現 / 共感覚 / 食の日本語 / 類義分析 / トルコ語 |
研究実績の概要 |
2019年度は、これまでの研究成果をふまえ、味の表現に関する専門学術書を共著で執筆した。またトルコ語の調査について、データをまとめ論文として発表した。さらにこれまでの研究成果をまとめ研究発表を2回行った。 このうち、トルコ語の分析結果について以下に記す。 (1)普遍性について:日本語の味ことば分類表によってトルコ語の味表現も分類できるのか(味覚語彙における言語間の規則性とその体系に関する検証)。(2)多様性について:日本語の味表現とトルコ語の味表現とを比較した場合、それぞれの特徴はどのようなものであるのか(味覚語彙の種類と数に関する検証)。 上記の課題(1)について、今回の調査では次の表現については全く使用されなかったが、これらの表現が本当にトルコ語では使用されないのかどうか、今後、年齢層を広げるなどしてさらに調査が必要である。・今回の調査で使用されなかった表現:渋味、旨味、視覚の共感覚表現(形態を除く)、芳香、痛覚、冷覚、場所、食べ手、市場価値。(2)については、今回の調査では121種類のトルコ語の味表現が回答され、トルコ語にも多数のおいしさとまずさを表す表現が存在することが示された。その中身をみてみると、延べ語数では硬軟と乾湿、触性が多く回答され、異なり語数でもやはり硬軟と、粘性、乾湿の表現が多く使用された。このうち硬軟の表現は、おいしさにもまずさにも多く使用された。また味ことば分類表のカテゴリ別でみると、共感覚表現がもっとも多く回答された。この共感覚表現は、一方向性仮説にそう「触覚→味覚」表現が大多数を占めたが、中には仮説に沿わない例も一定数認められ、特に「嗅覚→味覚」表現で味を表すケースが複数みとめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年3月に予定していたニュージーランドでの調査が、新型コロナウィルスの影響により延期になってしまったため。また同じ理由で、採択されていた海外での研究発表についても、1年先に延期となってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ先の見通しは立たないが、海外での調査が可能になり次第、すぐに先方との調整を開始し、可能な限り早く調査を実施したいと考えている。 その他の今後の研究課題を以下に示す。過去に同様の手順で調査を行ったスウェーデン語と韓国語、そして中国語においては、一部に欠ける部分があるものの、おおむね満遍なく味ことば分類表の40 種のカテゴリに相当する語彙の分布がみられた(武藤2011、2013、2016)。ここから、 味覚語彙には言語の違いを超えた「生理的動機づけ」があるという可能性があると思われたが、今回のトルコ語の結果だけは、語彙の分布が偏っていた。ただしこの調査は、調査対象者が大学生のみで非常に限定的であることから、さらに幅広い年齢層に対し調査を行い、検証を続ける必要がある。さらに他の言語を対象とし、味表現の類似点と相違点、および共感覚的比喩に関する検証を続けることにより、味覚における、われわれ人間の生理学的普遍に基づく普遍的要素と各言語の個別的要素を明らかにしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスの影響により、2020年3月に予定されていた海外での研究調査が直前で中止されたため。今後状況が変わり海外での研究活動が可能になり次第、すぐに先方との調整を再開し調査に赴く予定である。
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