研究課題/領域番号 |
16K02639
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研究機関 | 神田外語大学 |
研究代表者 |
遠藤 喜雄 神田外語大学, 言語科学研究科, 教授 (50203675)
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研究分担者 |
西垣内 泰介 神戸松蔭女子学院大学, 文学部, 教授 (40164545)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 副詞節 / モダリティ / 視点 / 言いさし文 / how come / バリエーション |
研究実績の概要 |
本研究は、従来は語用論,談話分析の研究対象であったモダリティおよび視点に関わる意味的な言語現象を,統語構造を細分化し,動詞の屈折に関わる領域(IP) および補文構造に関わる領域(CP) をそれぞれ複数の「層」からなる構造と考え,モダリティ・視点の現象をそれぞれの統語的な「層」と関連づけることで人間の言語の意味と構造の関係を明らかにすることを目標にしている。 この目標を実施計画に沿って、次のように達成した。(1) まず、研究代表者が、研究協力者との共同論文として、ベルリンとジュネーブで開催された国際会議において、副詞節について研究発表を行なった。そこでは、副詞節に生じるIP領域のモダリティの性質と話し手のモダリティが関与する擬似条件文の性質を取り上げて、世界に向けて研究成果を発信した。(2)次に、視点については、英語のhow come疑問文を用いて、上記の国際会議で発表した。そこでは、how come疑問文においてゼロ主語が生じることを明らかにした。(3)さらに別の構文として、言いさし文を取り上げ、研究代表者が研究協力者と共に、日本語と西フラーメン語(West Flemish)に見る言いさし文について議論を重ね、言いさし文が両言語で終助詞と共に用いることができる点に着目し、その性質を多層の統語構造で表現する方法を探った。(4)バリエーションについては、研究代表者と研究協力者が議論を重ねた結果、how come疑問文が3つのバリエーションに分類できることを突き止めた。そして、その3つのバリエーションのパタンを多層構造を用いて、CP領域にあるFinという機能語の名詞性と補文標識の発音可能性に還元する可能性を模索した。これらの成果は、忘備録にまとめ、次年度以降に論文として国際的なジャーナルに発表する準備をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 副詞節については、研究計画の通りに、研究代表者は、研究協力者とともに国際会議で研究発表を行ない、日本語に見る副詞節に生じるIP領域のモダリティの性質と話し手のモダリティが関与する擬似条件文の性質を取り上げて、世界に向けて発信すると同時に問題点を探ることができた点で、当初の研究目標は達成された。(2)次に、視点については、英語のhow comeの構文を用いて、研究代表者は、研究協力者と議論を重ね、書き手の視点から書かれる日記英語にhow come疑問文がゼロ主語を伴って生じることを初めて明らかにすることができた。これは当初に計画していなかった以上の成果である。(3)言いさし文については、研究代表者は、研究協力者と共に、日本語と西フラーメン語に見る言いさし文について議論を重ね、言いさし文が両言語で終助詞を持てる点を明らかにした。そして、その性質を多層の統語構造で表現する方法を探ることができた。日本語と西フラーメン語の共通性は、当初に計画していた以上の成果である。この点のおおまかな論点は明らかにされ、論文にまとめる準備はできたので、当初の研究計目的は達成された。(4)バリエーションについては、研究代表者と研究協力者が議論を重ねた結果、how come疑問文が3つのバリエーションに分類できることを突き止めることができた。具体的には、CP領域にあるFinという機能語の名詞性と補文標識の発音可能性に還元する可能性を模索できた。(1)と(3)と(4)については、忘備録にまとめることができ、将来国際的なジャーナルに掲載する準備ができたので、研究目標は達成することができた。研究代表者と研究分担者との共通の論点については、2017年度に日本英語学会でシンポジウムを開催し、発表することが決まり、その内容をつめることができたので、研究目標は達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)副詞節については、ベルリンとジュネーブにおける国際会議における発表で明らかになった問題点を改定した論文を、チューリッヒの国際会議で研究発表することが決まっている。口頭発表した論文は、国際的なジャーナル用にまとめあげることを目指す。(2)視点表現については、how come疑問文を取り上げ、日本英文学会で開催されるシンポジウムで発表することが決まっている、この発表を契機に、その主要な点を国際的なジャーナルに論文としてまとめ上げることを目指す。(3)研究代表者と研究分担者の共同の作業については、視点とモダリティーに焦点を当てた内容を日本英語学会で開催されるシンポジウムで発表することが決まっており、共通の問題点と論点をさらに絞り込むことを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表で使用する予定であったタブレット機器が、次年度に、より発表に適した性能となって発売されることがわかったので、その分を繰り越した。また、図書費で購入する予定であった紙の媒体の書籍が、次年度に電子版として検索しやすい形でより安い価格で発売される予定であることがわかったので、その分を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
学会発表で使用するタブレット機器の最新版を購入する。また、研究に用いる研究資料の書籍の電子版を購入する。
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