研究実績の概要 |
平成29年8月から9月にかけて、エチオピア経由でケニアとジブチに渡航した。ケニアのダセナッチ語とブルジ語の母語話者を訪ねてミーティングを重ね、新規のデータを集めつつ、正確に修正してもらう作業を行った。その後ジブチを訪れてソマリ語とアファール語のデータを採集し、修正した。各言語の単文と埋め込み文における指標表現―I, you, here, there, today, yesterdayなどーを調べ、それぞれ一人称、二人称、その場所、日付以外を指すかどうかを調べた。ダセナッチ語のindexicalsは埋め込み文内で指示対象が変化するので、Kaplan (1977)の理論に対する反例となることがわかっており、ソマリ語、ブルジ語においても同様である。またもう一つの課題である否定表現と文脈についての研究も進展しており、ダセナッチ語の否定肯定極性項目の認可環境のデータを集め、分析を行い、アメリカのアフリカ言語学会で発表することができた。 今年度は査読つきジャーナルに投稿する論文のため、データの拡充に務めた。論文の下書きのデータを母語話者にチェックしてもらった。またダセナッチ語の文脈に関する論文が書籍の一章として出版された。 平成28年度に始めた、周辺言語であるブルジ語のデータ収集を継続した結果、指標と文脈に関する論文を学会で発表した。ブルジ語に関する文献は私の知る限りほとんどない。少数言語のデータを記録し、理論的分析を試みたことは価値があると思う。ソマリ語に関する研究をもっと深める必要がある。
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