研究課題/領域番号 |
16K02644
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
高橋 豊美 東洋大学, 法学部, 教授 (00639825)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 音韻理論 / 制約性 / 依存・認可 / 音節 / 韻脚 / 音韻エレメント |
研究実績の概要 |
本研究は、制約性の追求を主眼として、依存・認可という関係性を基盤とする音韻理論の発展を目指すものである。本研究では、研究代表者が展開してきた音節理論の枠組みをさらに議論しながら、韻律構造で音節の上位に位置する韻脚に上記の枠組みを敷衍し、この枠組みのなかで、日本語を中心に音韻現象の統合的な解明を試みるものである。 平成28年度は、本研究に関係する情報収集および資料の検討を広く行い、同様の関心を持つ国内外の研究者と意見交換を重ねながら、機会を設けるとともに、平成29年度に向けた準備を行うことが目的であった。9月に文法構造の再帰性をテーマとする国際シンポジウムに報告者として参加し、次の主張を展開した。 依存・認可の関係で規定される構造は、依存音韻論や統率音韻論では音節の非核位置にも存在すると考えられているが、余剰性を排した制約的な観点から、そのような関係を音節の非核位置に認めることはできず、これまで音群として記述されてきた事象の多くは非時系列の音韻エレメント束とみなすことができる。 この主張は、音韻エレメント束とみなすことができない「音群」を扱うにはエレメント理論をどのように修正すべきか、非核位置と核位置が擁すると考えられてきた依存・認可の関係も同様に排することができるか、という新たな議論をもたらすものである。後者はさらに、研究代表者が以前に提案した「頭子音」の制約族(Onset(Syllable)、Onset(Foot)、Onset(Prosodic Word))についても、音韻表示理論の修正が必要となることを示唆するものである。いずれも、本研究の韻脚に関する議論に影響することであるため、1月から3月に研究会を開催して議論を行った。 上記のほかに、防音・遮音性能を備えたブースを設置し、平成29年度のデータ採取のための作業環境を整備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
代表研究者の展開してきた音節理論を韻脚に敷衍する枠組みついて、シンポジウムでの指摘を踏まえて修正を加えることになったため、この枠組みに基づいて行う予定であったデータ採取が平成29年度に先送りすることになった。また、データ採取の環境整備の必要性についても指摘を受け、本研究の申請段階では計画に含まれていなかった、設備の導入を行ったことも、研究の遅れの一因となった。しかしながら、申請段階で構想していた計画よりも精緻な内容が期待できることになったことを考慮すれば、必ずしも否定的な意味での「遅れ」ではないと考えいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、まず、音節の表示理論の修正および韻脚の表示理論について論考を重ね、遅くとも年内に統合的な枠組みを提示することを目指す。文献調査、学会・研究会等における報告発表と諸研究者との意見交換がその主たる活動となる。提示した枠組みに基づいて、本研究の計画に記した音韻現象(音配列、母音の接続、鼻音性の波及、韻脚における非対称的な交替)のデータ採取を行い、平成30年度に向けて、その記述と分析に取りかかりたい。データ採取は、補助員の協力を得て、研究室内に設置した設備を用いて行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ採取・分析を行うための機器を購入する予定であったが、作業が次年度に先送りとなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
データ採取・分析を行うための機器の購入、データ採取に伴う補助人件費・謝金に使用することを計画している。
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