研究実績の概要 |
2019年6月にはKLS Selected Papersに『大阪・京都方言における撥音とピッチ・アクセント』を掲載。共通語の撥音にはアクセント核が共起しないのに対し、関西方言では母音と同様にアクセント核が起こりうることを撥音の音韻構造から解明した。一般的に共通語話者には撥音に置かれるアクセント核は非常に違和感があり、共通語と関西方言の違いの理解には大きな進歩である。この分析には統率音韻論の拡張が提唱されていて、音韻理論の発展に寄与している。撥音と「ぬ」が音韻構造的には同じだが、そこに連鎖する要素のステータスから音声具現が異なることをLicensor層を提唱し、説明した。これを更に音響分析で裏付けした。 大阪方言の韻律と特殊拍の関連性に焦点を当てて研究を進め、世界の言語の韻律の特長と照らし合わせて考察、Wien大学のMarkus Poechtrager博士を京都に招き、意見交換、共同研究を進めた。同志社大学で3月開催予定であった第15回音韻論フェスタでのゲストとしてDeusto大学のShanti Ulfsbjorninn博士を招聘し、講演を依頼、本科研費の集大成として促音と韻律に関するWorkshopも共同開催する計画を進めていたが、COVID19 pandemicのために開催中止となったのが残念であったが、その準備のために共同研究を進めてきたので、今後の研究に生かして行く事となった。今後、他の音韻論学者も交え, 繋げる。 2019年7月にLondonでのWorkshopの内容を中心に統率音韻論におけるLicensingに関する出版計画を(共同)編者として立ち上げた。こちらもCOVID19 pandemicのため、予定は約3カ月遅れてきているが、原稿も集まりつつあり、このまま進めてゆく。 大阪方言と似ていながら独自の体系もつ京都方言の研究にも繋げており、今後の研究の強い礎ができた。
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