研究課題/領域番号 |
16K02658
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
片山 晶子 東京大学, 教養学部, 特任講師 (10622805)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 社会言語学 / ナラティブ / 英語使用 / 社会経済階層 / 格差 / 言説 / パワー |
研究実績の概要 |
【平成29年度のデータ収集】 昨年度2度のインタビューデータが取れた米軍基地内もしくは周辺で活動する非典型日本人英語使用者の研究参加者については、データ収集を完了した。平成29年11月17日に現地である「基地の町」に入り基地やそれがもたらした社会慣行を観察できる地域で、参加者に関わる周辺データを集め、続いて11月18日に参加者3名のうち2名と面会し、今までのデータの振り返りに基づいた最終インタビューをグループインタビューの形式で行った。前2回のインタビューで絞ったテーマについて本人たちに省察をしてもらうことで、さらに深い理解を得ることができた(この米軍基地関係の3名のナラティブ研究は次年度9月にブダペストで開催されるSecond International Conference for Sociolinguisticsで発表予定 )。 【国際学会参加】 7月:世界最大の応用言語学会AILA(Association Internationale de Linguistique Applique)が開催したAILA2017-World Congress in Rio Brazilで本研究の中間報告としてHave-Not English Users in Japan’s Discourse of Globalization: A Narrative Studyを口頭発表。今回の大会は社会言語学の発表が大多数を占めたせいもあってか、多くのコメントをもらえた。またアジア以外のクリティカルな社会言語学的研究にも触れ有意義であった。 3月:Georgetown University(Washington DC)のRoundtableという言語学研究イベントに参加。今年のテーマが本研究と密接に関わるDiscourse(談話または言説)であったため、特に分析方法と理論のアップデートができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データ収集は一人を残しぼぼ終了しているが、計画していた男性・50代東京以北の在住のアウトライアー英語使用者(高卒以下、非都市在住、社会経済階層があまり高くない)が未だに見つかっていない。 すでに済んでいるデータについては書き起こし、分析ともほぼ順調に進んでおり、中間発表を予定通り国際学会で順次発表し、批評批判を仰いでいる。本研究を常に次の国際学会にプロポーザルが承認されている状態にしておくことによって、絶え間なく発表の準備をしている状態にあることが、研究を前に進める機動力となっている。国際学会では常に恩師や同様な研究(研究方法・テーマ・理論のそれぞれに共通点がある研究)をしている内外の研究者と、意見を交換し、示唆に富むアドバイスをもらうことができた。 また国内の小規模な研究会でも、日本社会のコンテクストで研究をする同僚の研究者からデータや分析についての問題点を指摘してもらっている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の3年目は以下のことを予定している。 1. 第4の研究参加者(上記の男性50代アウトライアー英語使用者)を早急に見つけて複数回の録音インタビューをする。 2. 9月にブダペストで行われる社会言語学会([実績の概要]の項参照)での発表を十分に準備して成功させる。 3. この3年の研究機関に国際学会で発表した部分的研究の論文を完成させ投稿する。 4. 研究全体をどのような形でまとめ、発表するか具体的な計画を立てる。 本研究は、前の科研研究「日本人にとっての英語の資本性」で調査した「典型的日本人英語使用者」のデータ・分析と対になる探求である。したがって、本研究と前の研究と合わせ、どのようにまとめ、どのように発表するのがもっとも妥当か十分な検討をし、計画を立てる。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年計画していた学会参加のうち3月に行ったGeorgetown University Roundtableは日数が短かったこと(通常海外の学会は5泊だが、業務の都合もあり3泊の出張となった、)最後の研究参加者のインタビューがまだ取れていないことが、当初の計画より幾分かの余剰金が次年度使用額に残った理由である。 平成30年度はデータ収集を完全に終わらせる予定であり、翌年度分助成金と合わせてこの研究参加の謝金とインタビューのための出張費用に当てる予定である。その他の平成30年度分助成金の使用目的は当初の予定通りである。
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