研究課題/領域番号 |
16K02660
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
渡辺 己 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (30304570)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | セイリッシュ語 / スライアモン語 / 焦点構文 |
研究実績の概要 |
本課題はスライアモン語の焦点構文について,いくつかの点について重点的に調査研究をおこなうものである。そのうち初年度の28年度は,焦点構文の冒頭に現れるコピュラ的な語の性質について,および焦点が当てられた内容の排他性の問題について特に調査した。 まずこれまでに調査収集したデータのうちの焦点構文を網羅的に抜き出すことから研 究を開始し,特にこれまで現地調査で収集した自然談話テキストの分析を進め,その中から焦点構文を洗い出し,タグ付けをするなどした。焦点構文に使われる,いわゆる分裂構文(cleft)の冒頭に現れるコピュラ的な語について,それが文末(あるいは句末)にも現れることがあることが分かった。その際のこの語の意味機能はまだはっきりと分からないが,多くの場合,その前で述べたことに対する逆説を示すようである。この場合,述部性はまったくない。この点から,この語が分裂構文で文頭に現れる場合も,それが(主節)述部として分析すべきものか問題があることがわかった。単なる焦点標識となっている,あるいはなりつつある(文法化しつつある)のかもしれない。焦点が当てられた内容については,排他性がないことが分かってきたが,この点についてはデータをさらに収集する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題で取り組む問題点のうち,重要な2つの点について明らかになってきており,初年度としては順調に研究が開始できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2年目以降も引き続き重要な点についての調査研究を続ける。特に焦点構文に関するプロソディーの研究に着手する。初年度は過去に録音した資料の整理をおこなったので,2年目には音声解析ソフトを使った調査をする予定である。2年目は現地調査もおこない,不足している資料を収集することもおこなう予定である。 この他,初年度の経験から,他の言語の焦点(構文)に関する研究にさらに幅広く目を通す必要性を強く感じたので,2年目はより積極的にスライアモン語以外の言語の研究に触れるようにもし,他の研究者とも意見交換をするようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は現地調査の日程を調整したものの,現地の話者(調査コンサルタント)との調整がつかず,現地へ行くことは断念し,これまで収集した資料を元に研究したため,旅費や調査者金として予定していた額が未使用になった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は現地調査がおこなえる予定であり,その際に使用する。その他,海外の学会への参加も予定しており,その旅費にも充てる予定である。
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