研究課題/領域番号 |
16K02661
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
谷口 龍子 東京外国語大学, 大学院国際日本学研究院, 准教授 (20570659)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 台湾での日本語使用 / ナラティブ・データ / 言語混用 / 日本語人意識 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、台湾在住の母語を異にする日本語話者(日本人配偶者、台湾人日本語使用者、日台国際児)のナラティブ・データについて、言語混用に関する言語学的分析、日本語人フレームという認知言語学的分析という2つの観点から分析し、両者の相関について総合的研究を行うことである。 台湾には、日本統治時代に日本語を学んだ日本語使用者、および台湾に長く在住する日本人の配偶者や、国際結婚家庭に生まれた国際児など、日本語使用者が3つに大別される。彼らに聞き取り調査を行い、ナラティブ・データを収集し、言語混用、日本語人意識、またそれらの相互の関連について総合的に分析を行う。データ収集方法、ならびに分析の詳細は以下の通りである。 ①言語混用に関する分析:インフォーマントのナラティブ音声データによる文字化資料をもとに、使用言語の混用について、語、文、談話の各レベルにおいて言語学的に分析する。 ②日本語人フレームに関する分析:ナラティブ・データい見られる日本語人意識(あるいは台湾人意識、中国人意識、先住民意識など)について、認知的フレーム、ポジショニング分析を参考に主に認知的な視点で分析する。 ③使用言語、コードスオイッチングと日本語人フレームとの関連について、言語的特徴と認知的フレームやマーカーとの相関関係について統合的に分析し、上記3つの異なる位相における異同についても明らかにする。2016年度は、主に日本人配偶者、および日台国際児(高校生)への聞き取り調査を実施した。また、2017年1月には本研究の分析の方向性への示唆となる講演会を開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目は、2016年11月および2017年3月の2回台湾で調査を行った。 11月の出張では以下の調査を行った。 ①台湾における日台国際結婚家庭の状況ならびに日本と台湾の人物往来や移民の現状について聞き取り調査。②台北在住の日本人配偶者に、日本統治時代に台湾に嫁いだ婦人の会(こけし会)について聞き取り調査を行った。③大同中学李秋ケイ氏、台湾大学教員より、日本と台湾の高校生交流と国際児童の現状について聞き取りを行った。その他、淡江大学教員より日本文化と関連する台湾文化の復興運動について聞き取りを行った。 3月の出張では、台湾人と日本人の国際児童(高校生)5名、および一部はその母親に対して中国語と日本語によるナラティブ・ヒストリー調査を行った。さらに、2017年1月には、本研究の課題の方向性に関連して、言語の復権をテーマに、バスク研究者、およびイギリスにおける少数言語の復権に関する研究で名高く、少数言語使用のステイタス向上(metroethnicity)を提唱するJohn.C.Maher教授を招き、講演会を行った。講演内容の言語のステイタス向上については、台湾人にとっての日本文化継承のみならず、日本人にとっての台湾ブームの現状を理論的に説明し得る貴重な講演会であった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の対象となる者は、台湾在住の母語を異にする日本語話者(①日本人配偶者、②台湾人日本語使用者、③日台国際児)である。 ①~③はそれぞれ、日本統治世代、戦後世代、現代の若者世代に大別されるが、日本統治世代の人々は高齢化が進んでおり、2016年度の調査では以前の協力者が2名他界していたことが判明した。 今後も協力を得られる人数の確保がどの程度得られるか未知数であるため、日本統治世代に関しては、聞き取り調査の実施だけでなく、日記や記録などの文字資料の収集も並行して行うことも視野に入れて進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品については、デスクトップ型のコーンピュータを購入予定であったが、従来使用していたパソコンが使用可能であったために、次年度に購入することとした。また、旅費については、連携研究者が体調を崩し海外出張2回分が取り止めとなった。 さらに、次年度以降、聞き取り調査による音声データの文字化作業に予定以上謝金がかかることが予想されることから、次年度以降は本来物品費と旅費として計上している使用額の一部を謝金に充てるために、その分、初年度はあえて使用額を抑えることとした。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費としては、主にデスクトップ型パソコンおよび文献の購入、旅費としては、現地調査旅費複数回、学会大会参加費、人件費、謝金としては、音声データの文字化作業に要する謝金を主な支出とする予定である。
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