本研究では、台湾在住の日本語使用者(日台国際結婚家庭のバイリンガル、日本統治時代に日本語教育を受けた先住民など)のナラティブ・データに見られる日本語と中国語、台湾語、台湾原住民言語(布農語)との混用に関する言語構造的特徴について談話分析の理論を用い、両者の相関を中心に統合的分析を行った。言語使用の選択、または言語混用の背景にある日本語人意識(以下、日本語人フレーム)とアイデンティティとの関わりの探求を目的とした。具体的には、台湾における母語を異にする日本語使用者の日本語人意識やアイデンティティについて認知的フレームによる談話分析を行い、言語混用の特徴と日本語人フレームの相関について質的分析を行い統合的な分析も試みた。また、比較対照として日本とオーストラリアのバイリンガル・データの調査も行った。 平成28年度;ナラティブ・データ(日本語、中国語、台湾語、布農語、またはこれらの混用)の収集、文字化を行い、言語混用の構造的分析、日本語人フレーム分析試論を試した。日豪バイリンガルの調査、分析も同様に行った。 平成29年度;ナラティブ・データ(日本語、中国語、台湾語、布農語、またはこれらの混用)の収集、文字化の継続、言語混用の構造的分析、日本語人フレーム分析を行った。調査中に分野を超えた理論の展望に関する以下の研究会(平成29年1月20日テーマ:言語の復権:Metroethnicity(メトロエスニシティ)への視座)を開催。 日豪バイリンガルの分析も継続。 平成30年度:研究成果の発表、および総括として研究会(平成31年2月8日テーマ「多言語社会 台湾の「日本語人」に見られる 言語混用と分析」)を開催。 日台国際児のナラティブ・データを談話分析のポジショニング理論による分析から、台湾在住の日本語人が重層的なアイデンティティを有しているという知見が得られ、それらの分類基準作りに貢献した。
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