本研究課題の成果の意義は,ハイダ語のいくつかの文法事象に関して,先行研究では十分に扱われていなかった問題を明らかにし得た点,あるいは,それらとは違った視点から分析した点にある。例えば,類別接頭辞が名詞の指示対象を個別化する働きを有し,それが類別一般の本質的な機能であること,また,状態化接尾辞の機能が「事態の状態化」と「事物の状態化」を表わす動詞を派生すると統一的に説明したこと,更に,連体修飾構造の記述に際して疑似的名詞節なる単位を導入した点などが成果の大きな特徴であるといえる。 加えて,こうした基礎的な記述の積み重ねは,消滅する可能性の高いこの言語を保存ためにも大きな意義をもつと思われる。
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