研究課題/領域番号 |
16K02666
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
成田 克史 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (40128202)
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研究分担者 |
Rude Markus 名古屋大学, 教養教育院, 准教授 (90282342)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ドイツ語 / イントネーション / 低アクセント |
研究実績の概要 |
平成28年度は、読み上げ文の作成とドイツ語母語話者による読み上げ文の音声の収録と選別を行う予定であったが、諸般の事情により、読み上げ文を考案するにとどまった。一方、低アクセント凹部のピッチ加工による刺激音声作成の試行と、研究成果を反映させるべきプロソディック・ライティング(文字の上下位置・太さ・幅により、音の高さ・強さ・長さという韻律的特徴を書き表す手法)の改良を先行して実施した。 ピッチ加工による刺激音声作成は、研究代表者が、梁辰講師(中国、江南大学)による手引き「高さと長さに対する加工と再合成」(未公開資料)を参考に行う。刺激音声は、音声処理ソフトウェアPraatのManipulate機能により、ピッチ曲線を抽出し、一定時間ごとに計測される基本周波数の値を書き換え、再合成することによって得られる。試行では、拙論「ドイツ語イントネーションの典型性について ―日本人ドイツ語上級者との比較―」(『ドイツ文学研究』48 (2016) pp. 59-73)で使用した音声の一部を基に、初期設定のまま、10 ms毎に周波数計測を行い、低アクセントのピッチ曲線最深部の周波数を10 Hz低下させ、曲線の始端と終端に向かって一定の割合で低下の幅を狭め、始端と終端で原音声のままとなるように加工した。聴取の結果、自然な音声が再合成されることを確認した。 本研究の成果は、プロソディック・ライティングによりドイツ語教材に生かすことが期待されるが、研究分担者によるこれまでの実験で、文字の描き方が、その教育効果に影響を及ぼすことが確認されたため、研究分担者はカリグラフィーの専門家の指導を受け、より視認性の高い文字の描き方の習得に努めている状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は学内の研究環境の転換期にあたり、想定したエフォート率を達成できなかったことが主たる理由である。ただし、研究代表者のマネジメントにも至らぬ部分があった点は否めない。 計画では、低アクセントが付与される音節の前後に文アクセントが置かれない音節が 2 個以上ある文を作成する予定であった。それに即して、10の読み上げ文(Jetzt singen die 'Wiener Saengerknaben. / Er will mit dem V'W zur Uni fahren. / Damals war Mar'tina am staerksten. 他7文、低アクセントが付与される音節の前に ' を付す)を考案したが、1)後続する音節に文アクセントが置かれることがないか、2)低アクセントが付与される音節が無声子音を含んでいても、文アクセントが十分に実現され、ピッチ加工が成功するかなど、検討の余地が残っている。その結果として、ドイツ語母語話者による読み上げ文の音声の収録と選別に入ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、まず、前年度計画の積み残し部分である、読み上げ文の作成並びに確定と、ドイツ語母語話者による読み上げ文の音声の収録と選別を行い、年度末までに、本来の計画である、標準ドイツ語を話すドイツ語母語話者に聞かせ、文アクセントの有無とその明瞭度を判定させる実験を行う。実験は、実験協力者数20名を目標に、日本とドイツで行う予定である。 平成30年度は、上記の実験の結果を集計し、低アクセントが知覚されるには文アクセントを担わない中立的な高さからピッチがいったん下降した後に上昇することが必要であるとの仮説を検証し、その知覚に必要なピッチの下降幅を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
学内の研究環境の転換期にあたり、想定したエフォート率を達成できなかったことにより、書籍購入、資料収集のための旅費、研究補助の人件費を計画通りに執行できなかったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度からの繰越金191,390円については、実験のための海外渡航の経費、実験協力者に対する謝金として使用することを優先する。他に、必要に応じて、図書購入費、資料整理のための短期雇用の経費として使用する。
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