本研究は、結果構文のコーパス分析と使役構文と関連づけて結果構文を捉えることにより、ドイツ語における結果表現の全体像を記述することを目的としている。方法論的にはコーパスを用いて、コロケーションの観点から構文の言語使用分析を試みた。結果構文には結果状態が形容詞で示される場合と前置詞句で示される場合があるが、ここでは主に前者を対象に、ある形容詞がどのような動詞と結びつき、どのような意味タイプの結果構文を形成するのか、コーパスを用いて調査・分析した。調査の結果、様々な動詞と結びつき様々な意味タイプの結果構文を形成する形容詞もあれば、結びつく動詞が非常に限られている形容詞もあることがわかった。また、結びつく動詞によって、形容詞が「結果」の意味で解釈される場合もあれば、「状態・様態」の意味で解釈される場合もある(den Teller leer essen [(料理を)食べてお皿を空にした] / einen Laden leer mieten [お店を設備などが何もない状態で借りた] )。形容詞kaputtの場合、様々な動詞と結びつき様々な意味タイプの派生的結果構文で生産的に用いられることが確認された。中には、動詞の語彙的意味からすればkaputtとの結びつきは考えにくいが、動詞の表す行為が過度に(uebermaessig)行なわれるかまたは当該の状態が長く続くことによって対象がkaputtの状態になることを表すものも見られた。人主語再帰構文を形成するものの中には、結果状態としてのkaputtの意味は薄れ、基礎動詞が表す行為を強調する意味として用いられるものもある。また、状態動詞と結びついて物主語再帰構文で用いられる事例も観察された(sich kaputt stehenなど)。これらは、頻度的にはごくわずかであるが、先行研究との関連で興味深い事例であり、今後の課題の一つである。
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