研究課題/領域番号 |
16K02674
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐藤 彰 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 准教授 (90312438)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 災害報道 / 談話分析 / メディア |
研究実績の概要 |
東日本大震災に関する欧米メディアの報道に接して気がつくのは、それらにおいて原発事故に対応する現場作業員が度々ヒーローとして扱われていることである。それが研究代表者の個人的な印象でないことは、国内メディアにおいて、彼らが海外で英雄視されていること自体がニュースとして取り上げられたことからもわかる。欧米メディアで彼らが英雄視されたことに報道する価値があるとされたことは、彼らの扱いが国内メディアと海外メディアでは大きく異なっていたことを示している。彼らは、海外メディアが報じるようにヒーローだったのか、それともそうではなかったのか。 2018年度は、ヒーロー/英雄ということばを手がかりに、原発事故作業員を国内外メディアがどう扱ったのか、より具体的には、彼らをどのように異なって表象したのか、を検証した。 分析の結果、海外メディア(英米独仏西の新聞報道)においては、現場作業員が英雄視されていることを率直に伝えたり、また彼らを積極的に賞賛したりする一方、国内メディア(朝日新聞・読売新聞)においては、「ヒーロー/英雄」は地の文ではなく(広義の)直接引用内で使われ、またそれが地の文で使われる場合は作業員の英雄視に否定的であることがわかった。さらに、国内メディアがそのような形で、海外メディアのように作業員を英雄と呼んだり英雄視したりすることに抵抗を示すのは、戦後の日本におけるヒーロー観が変容したことが影響している可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者使用の研究室が入居する研究棟の耐震改修工事に伴い、仮移転先の研究室への引越を行ったが、(1) 引越の日程が2か月延期となり、その間の研究が滞ったこと、(2) 仮移転先では1室を20人程度で共同利用するため、使用可能なスペースが限定され、必要な書籍の配架ができず(多くを倉庫内に保存)、また文字化作業、データの整理などが行えなくなったことから、年度内の研究が完了できず、期間延長申請を行うに至った。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」で記した内容に加え、今後は躯体撤去や外構工事による大きな騒音があると予告されており、仮移転先研究室の研究環境悪化は避けがたいものの、共同利用者がいない/工事が行われない週末等を利用して研究を進める予定である。また、2019年6月に香港で開催される国際語用論学会に参加し、最新の研究成果に触れたり、興味関心を共有する海外の研究者と情報交換を行ったりすることで、本研究を前進させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は、研究代表者使用の研究室が入居する研究棟の耐震改修工事に伴い、仮移転先の研究室への引越を行ったが、(1) 引越の日程が2か月延期となり、その間の研究が滞ったこと、(2) 仮移転先では1室を20人程度で共同利用するため、使用可能なスペースが限定され、必要な書籍の配架ができず(多くを倉庫内に保存)、また文字化作業、データの整理などが行えなくなったことから、年度内の研究が完了できず、期間延長申請を行うに至った。 2019年度は、耐用年数の超過したパソコンやプリンタの買い換え他、6月に香港で開催される国際語用論学会に参加し、最新の研究成果に触れたり、興味関心を共有する海外の研究者と情報交換を行ったりすることを計画している。
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