研究課題/領域番号 |
16K02676
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
栗林 裕 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (30243447)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | トルコ語 / チュルク諸語 / ウイグル語 / 複合動詞 / ナル表現 / 数量詞遊離 |
研究実績の概要 |
本研究はトルコ語をはじめとするユーラシア大陸全域に分布しているチュルク諸語における動詞複合体(複合動詞)の語形成パターンを精査し、そのバリエーションを明確に提示すると共に、 同じアルタイ型言語といわれている言語タイプの中で、なぜ複合動詞のバリエーションに差異が見られるのかについて考察を深めるものである。全研究機関を通しての重点項目として以下の項目を掲げた:1)現地調査に基づく記述的資料、2)文献調査に基づく歴史的資料、3)言語理論の知見に基づく理論的アプローチにより総合的な視点からチュルク諸語に見られる複合動詞の全体像の解明。 平成28年度は、主にフィールドワークを実施し、研究成果の発表の場であるトルコ共和国への渡航を予定していたが、テロによる不測の事態の発生により国際研究集会が延期され、渡航することができなかった。従って当年度は、1)への代替措置として、フィールドワークを実施せずにも研究を進めることができる3)の理論的アプローチによる基礎的準備作業を主に行った。研究過程における動詞複合体に関わる具体的なトピックとして、1)日本語の複合動詞との対照研究に関わる書籍(分担執筆)の執筆、2)補助動詞「ol-」‘なる’ に関わる類型論的研究、3)数量詞の連体修飾と副詞的修飾の振る舞い方について現代トルコ語を中心にチュルク系の諸言語の状況を概観し、それらをまとめて当年度の成果の発表を行い、また次年度開催予定の国際研究集会へ研究成果の発表のための応募することにより次年度での研究の準備を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の当初の全体的な予定は以下の通りであった:1) 調査項目の作成、2)ウイグル語の複合動詞ついての母語話者の調査(国内)、3) 第18回トルコ言語学国際会議(開催地:トルコ・チュクロバ大学)での研究成果の発表、4) コソボにて約2週間の現地調査、5) 調査資料の整理と分析、ユーラシア言語研究コンソーシアム研究会での発表の準備、6)研究論文の作成、7) 平成28年度の調査結果およびコソボの調査概要のインターネットへの公開。
このうち、3)と4)については、トルコ共和国で複数回のテロ事件発生という不測の事態があり、渡航が実現できず予定していた研究発表をキャンセルせざるを得なくなった。しかし、フィールドワークを伴わない理論的研究の準備を前倒しで実施することにより、遅延なく全体的な計画を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
現時点ではフィールドワークを実施する現地の状況も徐々に改善していると見受けられるため、28年度に諸事情で実現しなかったバルカンでの現地調査が滞りなく実現できるように準備する予定である。しかし不測の事態が生じた場合は、無理をせず現地でのフィールドワークの代替措置として、理論的研究での言語分析や国内在住の母語話者の協力のもとでの言語分析に重点を置くなどの措置を講じていきたい。
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