研究課題
本研究はトルコ語をはじめとするユーラシア大陸全域に分布しているチュルク諸語における動詞複合体(複合動詞)の語形成のパターンを精査し、そのバリエーションを明確に提示すると共に、 同じアルタイ型言語といわれている言語タイプの中で、なぜ複合動詞のバリエーションに差異が見られるのかについての考察を行なった。全研究期間を通しての重点項目として以下の3項目を掲げた:1)現地調査に基づく記述的資料、2)文献調査に基づく歴史的資料、3)言語理論の知見に基づく理論的アプローチ。以上の項目について総合的な視点からチュルク諸語に見られる動詞複合体の全体像の解明を目指した。最終年度(令和4年度)では、研究期間に得られた成果を、言語教育との関わりで論じることにより応用的な側面の研究成果の公表を行なった。 本研究成果は動詞複合体の研究として、1)日本語の複合動詞との対照研究に関わる研究、2)補助動詞「ol-」'なる' などの事態把握表現の数量化に関わる類型論的研究、3)動詞複合体に関連する研究をまとめ、トルコ語とその文化的側面も含めた教科書を出版して、本研究成果の総まとめを行い、本研究成果の社会還元をおこなった。年度末には共同開催したユーラシア地域の言語についての研究集会(ユーラシア言語研究コンソーシアム)で成果の発表を行なった。今後の研究の展開として、以下の項目を継続していく:1)補助動詞「ol-」などの事態把握表現に関わる類型論的研究のための数量化の方法論の精緻化、2)チュルク系諸言語で共通するテキストの翻訳を通して表出される言語特徴の研究を教育教材としての活用。これらの実現に向けて、本研究課題の総まとめである「トルコ語話者の言語と文化について」の大学生向けの教科書と、チュルク諸語の一つである「ウイグル語の動詞複合体について」の英語論文を出版できたことは、有意義な進展であると考えている。
〔研究会発表〕1.発表者名:栗林 裕 2.発表標題:「チュルク諸語のナル的表現の翻訳対照」3.研究会名:ナル表現研究会 4.発表年:2022
すべて 2022 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
Contribution to the Studies of Eurasian Languages series
巻: 23 ページ: 65-82
Teaching Turkish and Turkic Languages during the Pandemic: Past, Present and Future Directions
巻: 6 ページ: 219-239
http://www.cc.okayama-u.ac.jp/~kuri/hp/book-index.html
https://www.lib.okayama-u.ac.jp/up/publications/book73.html