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2016 年度 実施状況報告書

感情表現の構文パターンと感情の捉え方の認知類型的実証研究:日韓中英仏独語を対象に

研究課題

研究課題/領域番号 16K02677
研究機関岡山大学

研究代表者

王 安  岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (70580653)

研究分担者 上原 聡  東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 教授 (20292352)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード言語類型論 / 感情表現 / 6言語 / 構文パターン分析 / データベースの構築 / 人称制限と感情の捉え方
研究実績の概要

本研究は、形態類型的に異なる日韓中英仏独語の6言語を対象に、感情表現の構文パターンの相違点・類似点を、実証的調査を通じて明らかにし、感情の捉え方における言語間の差異と普遍的傾向を類型論的観点から記述することを目的としている。
平成28年度では計画通りに、日・韓・中3言語を中心に研究を実施し、以下の実績を得た。 (1)3言語の感情表現実例の収集・整理:村上春樹の小説10作の3言語版を対象に、感情表現を含む用例およびその前後の文脈を含めて抽出した。 (2)用例のデータベース化:抽出・分類された用例をさらに「会話文」と「非会話文」に分け、パソコン入力し、ソートや検索できるようにデータベース化した。 (3)3言語感情表現の構文パターンの分析・対照:データベースに基づいて、3言語それぞれに見られる常用構文パターンを見出し、3言語間の相違点と類似点を分析し、感情の捉え方の異同と傾向を考察した。 (4)研究打ち合わせ:代表者と分担者はメールなどによる情報交換に加え、研究打ち合わせを行い、直接用例の検討や分析手法などについて議論を重ねた。(5)学会研究会での発表・報告:代表者および分担者はそれぞれの研究成果を、学会研究会などで口頭発表、または論文投稿を行った。代表者(王安)は特に感情の表出における中国語の使役文と日本語の感情形容詞述語文の統語的・意味的特徴を考察し、両者に見られる感情の普遍性に由来する共通点を明らかにし、その成果を日本認知言語学会第17回大会(2016年9月)で発表し、同学会論文集に論文を投稿した。また、分担者(上原聡)は、特にタイ語・韓国語を含む東南アジアの諸言語の主観述語を中心に認知類型論的考察を行い、主観述語における言語習慣化の程度が言語間において差があることを明らかにした。その研究成果を、学会研究会や招待講演など多くの場で発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成28年度の研究計画は概ね順調に進んでいるが、用例収集及びデータベース構築の際に以下の問題点が見られた。
①、データの収集・整理、パソコン入力などは全部手作業で、学部生のアルバイトを雇用して行っているため、予定よりだいぶ時間がかかってしまい、作業が遅れたりすることもあった。
②、①の影響で、用例を観察・分析する時間や言語事実の考察・吟味する時間は十分ではなかった。そのため、今後もデータバースの修正や改善を引き続き行う必要がある。
③、収集した用例の質・数について、感情表現を含む用例は予測より数が少なく、また「好き」「嫌い」などいくつかの表現に集中しているため、考察・分析に用いる感情表現の用例は偏りが見られる。
以上気づいた問題点について、作業をする人手を増やし、用例収集のソースを村上春樹の小説以外のより広い分野(文体)に広げるなどの改善策によって、今後データベースを改良しつつ、研究と考察を進めていきたいと考えている。

今後の研究の推進方策

平成28年度の研究実施過程で気づいた問題点を改善しつつ、平成29年度では、英、仏、独語の3言語を中心に考察を続ける。

具体的には、(1)3言語の用例を精密に収集・整理し、検索可能なデータベースを構築する。現段階では、3言語それぞれデータ収集・入力の人手はすでに確保し、5月から具体的に作業に入る予定である。(2)収集した3言語の実例に基づき、構文パターンにおける相違点と類似点を丁寧に分析する。さらに、3言語の感情の捉え方の違いと普遍的傾向を見出す。(3)研究代表者と分担者はより頻繁に情報交換を行ったり、研究打ち合わせをしたりし、共同発表を実施したいと考える。(4)研究成果をより積極的に学会や研究会で公表し、多くの研究者と意見交換を行いたい。

次年度使用額が生じた理由

執行計画よりも安価に購入できた物品があったために44円残った。これは次年度の予算として執行する。

次年度使用額の使用計画

用例収集のための作品購入に使用する予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 「行為連鎖からも見る感情表出の使役文と形容詞文との関連性―日中両言語の感情の捉え方を比較して―」2017

    • 著者名/発表者名
      王安
    • 雑誌名

      『日本認知言語学会論文集』

      巻: 第17巻 ページ: 印刷中

    • DOI

      AA11595288

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] スィリアチャー ロイケオ・上原聡「日本語とタイ語の一人称代名詞使用に関する認知言語学的一考察ー出現数の差に注目したケーススタディー」2017

    • 著者名/発表者名
      スィリアチャー ロイケオ・上原聡
    • 雑誌名

      『日本認知言語学会論文集』

      巻: 第17巻 ページ: 印刷中

    • DOI

      AA11595288

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 「ラネカーのsubjectivity理論における「主体性」と「主観性」ー言語類型論の観点からー」2016

    • 著者名/発表者名
      上原聡
    • 雑誌名

      中村芳久・上原聡(編)『ラネカーの(間)主観性とその展開』, 開拓社,

      巻: 第17巻 ページ: 53-90

    • DOI

      AA11595288

    • 査読あり
  • [学会発表] “The cognitive theory of subjectivity and the invisible speaker in a cross-linguistic perspective: Zero 1st pronouns in English, Thai and Japanese”2017

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Uehara
    • 学会等名
      Linguistics Seminar (Invited Talk)
    • 発表場所
      University of Sydney
    • 年月日
      2017-03-22 – 2017-03-22
    • 招待講演
  • [学会発表] “Syntactic classification of particles in Japanese and how to teach them”2017

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Uehara
    • 学会等名
      Japanese Language Education Workshop (Invited Talk)
    • 発表場所
      University of Sydney
    • 年月日
      2017-03-20 – 2017-03-20
    • 招待講演
  • [学会発表] “The cognitive theory of subjectivity and the invisible speaker in a cross-linguistic perspective: Zero 1st pronouns in English, Thai and Japanese”2017

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Uehara
    • 学会等名
      Japanese Linguistics Symposium (Keynote Speech), University of Sydney
    • 発表場所
      University of Sydney
    • 年月日
      2017-03-17 – 2017-03-18
    • 招待講演
  • [学会発表] 「行為連鎖からも見る感情表出の使役文と形容詞文との関連性―日中両言語の感情の捉え方を比較して―」2016

    • 著者名/発表者名
      王安
    • 学会等名
      日本認知言語学会第17回全国大会
    • 発表場所
      明治大学
    • 年月日
      2016-09-10 – 2016-09-11
  • [図書] 『ラネカーの(間)主観性とその展開』2016

    • 著者名/発表者名
      中村芳久・上原聡
    • 総ページ数
      363
    • 出版者
      開拓社

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公開日: 2018-01-16  

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