研究課題/領域番号 |
16K02681
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
秋谷 裕幸 愛媛大学, 法文学部, 教授 (10263964)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 中国語 / 方言 / 身体名称語 / びん東区方言 / 語彙史 / びん語 / 音韻史 |
研究実績の概要 |
本研究の申請書類に記した平成30年度の研究計画は、[1]福清、寿寧、屏南方言のチェック調査(最終);[2]『びん語びん東区方言詞源詞典(身体部位部分)』の執筆継続、であった。 このうち[1]については、これら三方言および福安方言を記述した著書『びん東四県市方言調査研究』(中国語で執筆、A4で415頁)の原稿を完成させ、中国上海の上海教育出版社と出版契約を結んだ。令和元年度中には正式出版できるものと思う。 [2]については二回の研究発表(「びん語的{胎盤}義詞」。第十二屆臺灣語言及其教學國際學術研討會(ISTLT-12)台湾高雄・国立中山大学。2018年10月26日および「びん東区方言的{男陰}義詞及其相関的詞語」。漢語方言比較和地理研究論壇。西安市・陝西師範大学。2018年12月1日)を行い、また二編の論文を正式に発表した。すなわち「びん東区方言的“嘴”義詞及其相関的詞語」。《歴史語言学研究》第十二輯(中国社会科学院語言研究所)、245-261頁。中国語。査読あり。2018年10月および「びん東区方言的“肚子”和“肚臍”」。《語言研究集刊》第二十一輯(復旦大学漢語言文字学科)、510-520頁。中国語。査読あり。単著。2018年12月である。また「首」に関する論文が《語言研究》に受理され、また「尻」に関する論文が《語言学論叢》において二次審査のプロセスにある。 以上のように[1][2]ともに計画通りに進捗していると言えよう。 また2018年12月24日-2019年1月7日には南部方言群のデータを補うためびん清方言の現地調査も実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は第三年目であったが、これまでに全国学会、国際学会における口頭発表を五回行い(2016年11月13日、2017年6月10日、2017年11月12日、2018年10月26日、2018年12月1日)、論文を二編正式に発表し(《歴史語言学研究》第十二輯、2018年、《語言研究集刊》第二十一輯、2018年)、二編が受理されている(《語言学論叢》、《語言研究》)。これまでに予定している身体名称語40語のうち計25語(頭;口;唇;舌;歯;ひげ;首;指;親指;小指;爪;腹;へそ;尻;肛門;男性器;睾丸;陰嚢;女性器;胎盤;唾液;目;目玉;涙;目やに)の原稿(初稿)を完成させた。 また、福安、寿寧、福清、屏南四方言のデータについては專著《びん東四方言調査研究》を完成させ、上海教育出版社にすでに原稿を送付し、出版契約も結んでいる。 以上のように研究はおおむね順調に進展しており、最終年度で十分に当初の研究計画を完成できる状態にあると考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では最終年度において、[1]《びん語びん東区方言詞源詞典(身体部位部分)》の初稿完成;[2]「関於編纂漢語方言詞源詞典的幾個問題」の執筆を行うことになっている。 [1]については汪維輝・浙江大学教授の助力を仰ぎつつ、《びん語びん東区方言詞源詞典(身体部位部分)》が収録する40語について、語源辞典として有益と判断される歴史文献資料上の記載を書き加える作業を行う。この作業は8月に杭州の浙江大学で行う。(外国旅費 研究打ち合わせ)そして初稿を完成させる。 [2]については、四年間の研究において得られた中国語方言語源辞典編纂上の問題点を総括した論文を執筆する。 また時間に余裕があった場合には、《びん語びん東区方言詞源詞典(身体部位部分)》のインターネット上での公開について検討を開始する。 なお当初予定していた書名《びん語びん東区方言詞源詞典(身体部位部分)》は、《びん東区方言人体詞演変史研究》に変更する可能性が大きい。収録項目は「涙」「汗」「唾液」のような分泌物も含み、また各項目の分量が当初の予定を大きく上回ることが確実で、《詞源詞典》(語源辞典)という名称が必ずしも適切とは言えない状況となったためである。ただしあくまで各項目ごとの分量の問題であり、内容は当初の計画に則っている。
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