研究課題/領域番号 |
16K02682
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
樋口 康一 愛媛大学, 法文学部, 客員教授 (20156574)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 文献言語学 / 中期モンゴル語 / 言語接触 / モンゴル語仏典 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、当初立案した研究計画に沿って、内外の研究機関等において各種調査に従事し調査資料の収集および整理にあたり、それを活用した文献言語学的見地からのモンゴル語仏典研究の成果を国際学会等で積極的に発表している。その概要は以下のとおりである。 2017年8月にハンガリーのSzekesfeherver市で開催された第60回常設国際アルタイ学会(Permanent International Altaistic Conference)において、研究成果の一部であるMongolian versions of the Lotus Sutra revisited を発表し、同学の士の批判を仰いだ。それを承けて改訂した論考が、今夏刊行予定の同学会Proceedingsで公刊予定となっている。また、これとは別に、ロシア連邦共和国アカデミー刊行のActa Linguistica Petropolitanaにも、モンゴル語訳『法華経』にかかる論考を提出予定である。 引き続き今夏、中国内蒙古自治区赤峰市で開催予定の第4回国際モンゴル学会(International Mongolistic Conference)およびキルギス共和国Bishkek市で開催予定の第61回常設国際アルタイ学会(Permanent Internationaっl Altaistic Conference)において、文献言語学的な見地からの仏典研究の成果発表を行う。 これらによって、モンゴル大蔵経の編纂過程並びにモンゴル語訳『法華経』『百喩経』『賢劫経』の成立過程にかかる新たな知見が得られたのみならず、中期モンゴル語、モンゴル文語に仏典モンゴル語が与えた影響についての新たな知見も得られている。特に、最後のものについては、1928年出版のF. Weller以来、久しい間現れなかった研究として注目すべきものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
内外の研究機関等の所蔵文献の調査、そこで収集した調査資料の整理と分析、それに基づく考察と内外の学会等におけるその成果の発信のいずれにおいてもほぼ計画通り進捗している。 この進展により、モンゴル語仏典の成立期において実現していた多言語状況下における言語接触の実態とそれが中期モンゴル語に与えた構造的な影響とさらにはそれがモンゴル文語の確立にいかに寄与したかについて、一定の知見が得られつつある。 より具体的には、とりわけ仏教術語とそれを活用した表現が平俗化し日常でも使用されるようになる経緯や、仏典において頻繁に使用される翻訳語法の世俗文献への浸透のあり方は、文語成立の過程を垣間見る格好の材料を提供することが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り、順調に研究計画が遂行されており、新たな知見も得られつつある。今後も当初の計画に大きな変更なく推進する所存である。 とりわけ、中期モンゴル語やモンゴル文語に対して仏典モンゴル語が大きな影響を与えたいたことが明らかにされたことは、今後の研究推進に大きく寄与することが期待できる。さらに、今年度は、これまで研究の手が及んでこなかった仏典その好例が『賢劫経』にほかないらいが、について、文献言語学的な見地から、蓄積した研究手法を活用して研究を推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品等の支出において微調整がかなわず若干の齟齬が生じたため次年度使用額が微額ながら生じたが、次年度においては齟齬なく執行する計画である。
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